ただ、バロン君は性格が内気で、人前で表情をあまり見せない。メラ二アさんの教育方針もあり、これまで表に出てくることもなかった。
ところが今年7月9日、フロリダ州マイアミで開かれたトランプ前大統領の集会にバロン君は珍しく姿を現した。「バロンコール」が巻き起こり、父親ばりに拳を高く上げ、親指を立てて会場の歓声に応えた。
壇上にいた前大統領は「こんなことをしたのは初めてだよね。兄貴たちよりも人気があるようだ。これについて、もっと話さないとならない」と目を細めながら話していた。
トランプ前大統領とメラニアさん、バロン君はフロリダ州の住人だ。この日の集会は、地元での支援者サービスだと当初はみられていたが、そうではなかった。
この集会から約1カ月後、トランプ政権時代に大統領補佐官を務めたミック・マルバニー氏が保守系メディアで、前大統領が若年層での支持拡大のためにバロン君からアドバイスを受けていることを明らかにしたのだ。
それ以降、バロン君の拳の突き上げは、トランプ陣営のマスタープランの一部であったと多くの政治アナリストが分析している。
米国の若者は左傾化が進み、トランプ前大統領は若年層での票獲得に苦戦している。ハーバード・ケネディ・スクールが9月末に明らかにした世論調査では、18~29歳の有権者の支持率ではハリス氏がトランプ氏を32%も離して、圧倒的にリードしている。
若年層の票は、これまでの大統領選でも当落に大きく影響を与えている。前回の大統領選でバイデン大統領がぎりぎりで当選できたのも、最終盤で若年層の票を呼び込めたからだ。
デッドヒートの中でトランプ前大統領が、不人気の若年層対策に力を入れるのは最終盤で最もやらなければならない課題である。
ここにきてトランプ前大統領は、ソーシャルメディアのインフルエンサー、アディン・ロス氏と対談したり、人気ユーチューバーのローガン・ポール氏のポッドキャストに出演した。いずれも背後にバロン君のアドバイスがあるとされている。