「心配しようにもどう心配していいかわからない。もし自分がよい情報や経験をもっていたら助言もできるのに……という歯がゆさもある。そのうえ、病気ならばSNSから離れて治療に専念すればいいのに、という思いも大きいと思います」
なぜ、SNSは「死因」や「病名」をはっきりさせたいのか
それではなぜ、SNSユーザーは死因や病名を執拗に知りたがるのか。中川氏が続ける。
「もともとネットがない時代も、有名人でなくても誰かが亡くなったり病気になったりすると、『あの家の◯◯さんはガンでね……』などと噂話が広がったり、ちょっとした時の話のきっかけになったものです。その意味では、誰かの死因・病名は、 “知りたい欲”として、人がもともと持っているものですよね。
ただそれがSNSによって可視化され、知らない人同士でも広く長く話題にできるようになりました。さらには、投稿に映るものや投稿日時などにより、“病気なのであればこの投稿時間にここにいるのはおかしい”など、探偵まがいのことも可能で、ある種ゲーム化できてしまう。本来、本人を知らない人にとっては“どうでもいい話”が、良くも悪くもSNSにより風化しなくなり、『答え』を突き止めないと気が済まない心理を増幅させているきらいはあるでしょう」
また中川氏は、“新型コロナ以降”、一部でますますその傾向が顕著になっていることも指摘する。
「未知なるウイルスだったため、詳細が明かされない病気や体調不良の原因として、コロナ、あるいはワクチンが原因なのではないかという疑念をもつ人たちが登場しました。何か本人たち当事者側に隠すべき不都合があるのでは……というわけです」
人間、未知なるものは怖い。同様に、知らされないのも“怖い”ため、何とか自分たちなりに『答え』を見つけて、納得したいという気持ちが“モヤモヤ”となり、ネット上に蔓延するのである。