●目上の人には「勉強になります」がベース
目上の人に対しては、具体的に分析して「褒める」というスタンスを取ると、「なんでそんなに上から目線なのだ」と怒られる可能性もあります。それゆえ、目上の人を褒めるときは、「とても勉強になります!」というスタンスが基本です。相手の良いところを見つけて褒めると、もっと良い知識を教えてくれるきっかけになるかもしれません。また、どんな相手でも、自分の時間と労力を割いてくれたことに関する感謝を忘れずに。
【例文】
「勉強になります! そのやり方で、今度私も挑戦してみます!」
「私にはそこまで考えが及びませんでした。さすがです、勉強になります! ありがとうございます!」
あなたが褒めたい相手は、あなたにとって大きな力になってくれる仲間です。褒めポイントを見つけられることは、それぞれの人が持つ得意分野を把握し、効果的にいっしょに動けるようになるということです。
あなたしかできないこと、あの人にしかできないことを、全力でそれぞれがやる。そうすると力は何倍にも膨れ上がっていきます。周囲の人と褒め合うことのできる関係性を育てて、より強い協力体制を築いていきましょう。
◆人間関係はめんどうくさいけど…
こだわりさんは、人間関係を拡大しない傾向の人が多いと思います。味方になってくれる人ばかりで構成され限られた人間関係の中にいるのは、とても安心できますが、実は「知らない人」との交流はとても大切なことです。
本章の最後では、人間関係の拡大がチャンスを運んできてくれることをお伝えしたいと思います。
ASDのある人のことを応援してくれる人は必ずいますが、そうでない人もいます。自分を良く思わない人、利用しようとするだけの人……様々な人々と関われば、どうしても人間関係の悩みやトラブルが出てきてしまうものです。
だからこそ、人付き合いが苦手な傾向があるこだわりさんが、人間関係を拡大しない選択肢を取るのは当たり前のことです。そうでなくても、単純に多くの人と会うことは体力的にも気力的にも疲れてしまうのは当然。私もいまだに多くの人と会いすぎると疲れて寝込んでしまうこともありますし、体調が悪いときはいつも以上に疲労がたまるので、できるだけ人に会わないようにしています。
しかし、それでも人間関係を拡大させていくのはなぜなのかというと、拡大していったほうが、自分にとってのチャンスが広がっていくからです。自分にとってのチャンスをつくってくれるのはいつだって人です。だからこそ、人と交流しなければ、どんなチャンスも生まれません。
先日、私がコーチングを担当した発達障害の方で、「会社内でどうしても周囲の理解を得られなくて困っている」という方がいらっしゃいました。そこで、その方に、「会社以外の場所で活動してみることで、良いご縁があるかもしれませんよ」と私はアドバイスをしてみました。すると、その人は積極的に様々なイベントに顔を出すようになり、そのコミュニティで仲良くなった人に誘われて、別の会社に転職することができました。
これは、あくまで一例ではありますが、「現状がうまくいっていない」という人は、「周囲の理解が得られない=環境が悪いだけ」という可能性があります。付き合う人の幅を広げてみることで、自分の新たな価値に気がついてくれる人に出会い、自分の特性を活かせる場所へ移動することは、決して不可能ではないのです。
しかし、ひとつの場所にとどまり続けているだけでは、自分の可能性を見いだしてくれる人と会うことはできません。だからこそ、今の自分に満足できていない人や、今の自分はダメな人間だと思ってしまう人は、付き合う人を変えてみてください。