◆すでに夫への愛情は消えていたのに
夫はずっと家にいるのに、娘を保育園に預けに行くのもお迎えもルカさん。夜は、終わらない仕事を気にしながらも夕飯を作ろうとするが、娘はワンワン泣きはじめる。なのに夫はのんきに「ご飯まだ?」と尋ねてきては、ゴミ出しひとつしない。もう彼女の精神状態はボロボロ。2歳で母乳をやめたあとには、もともと好きだったお酒をまた飲み始めるようになり、いつしか昼夜を問わず飲むようになっていった。
「もうそのころから、すでに夫への愛情は消えていました。でも娘の父だし、離婚もめんどうくさそうだし、いつか彼が変わるかもしれないというわずかな期待もあり、そのまま暮らしていたんです。でも、いつも心には隙間風が吹いていたというか……なんで私は家族を養いながら家事も育児もぜんぶ背負っているんだろうと、胸のあたりが苦しくてたまりませんでした」
◆生活を支えていた仕事が、どんどん減っていった
「そもそも私は作家になりたくて会社を辞めたのに、生活のために編集の仕事をするしかなくて。編集の仕事ももちろん嫌ではなかったけれど、やっぱり私は“自分で書きたい”という気持ちが強かった。その夢を彼から邪魔されているようにしか思えなくなっていきました。そして……娘が3歳くらいの時です。今度は、3人の生活を支えてくれていた編集の仕事が、どんどん減っていったんです」
理由はわかっていた。ルカさんは、目の前の仕事だけで精一杯で、新しい企画を仕掛けていくほどの時間的な余裕を持てなかったのだ。フリーランスの仕事とは、新規企画をしては売り込んでいく作業も必要。でも現実的には、来る仕事をこなすばかりの体勢になっていたため、仕事が衰退していくのは当然のことだった。
「それに、フリーとは、営業も自分でしなければいけないということ。ですから、どんどん新しい人脈作りもしていかないと、新規の仕事を受注できないし、進化しません。なのに私は、人脈作りどころか、目の前の仕事を納期まで終わらせることすらできなくなって……もう……仕事もプライベートも、暮らしのぜんぶに限界を感じていました」