「ダウ平均株価」との違い

「日経平均株価」と同じく「ダウ式平均」を用いる指数として、「ダウ平均株価(ダウ工業株30種平均株価)」がある。100年以上の歴史がある米国の株価指数として有名だ。現在は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社がこの「ダウ平均株価」を算出している。「日経平均株価」を「ダウ平均株価」はどちらも「ダウ式平均」を用い以下の式で算出される指数であり、分母である除数を調整している点で共通している。しかし、細かな点を見ると「ダウ平均株価」と「日経平均株価」は異なるところも多く、日本市場の特徴に合わせて変化してきた部分もある。

平均株価 = 構成銘柄株価の単純合計 ÷ 除数

「ダウ平均株価」の算出では構成銘柄の株価を単純に合計していくが、「日経平均株価」の算出では「みなし額面」を用いて修正株価を計算した後に合計していく手法が用いられる。

これは、かつて日本の株式には額面制度があり、企業は株券を発行する際、額面金額で発行していたことが関係している。額面金額は、50円、500円、5万円など銘柄により異なり、この額面水準をベースに株価が形成されてきた。例えば、1株単位で取引される株価5万円の株式と1,000株単位で取引される株価50円の株式では、株価水準があまりにもかけ離れており、5万円の株価の銘柄の影響度が大き過ぎるため指数計算に適さない。そのため、すべての構成銘柄の株価を50円の額面水準に修正して揃え、その修正株価を合計して除数で割ることになっている。

2001年の商法改正により、額面制度は廃止されることとなった。だが、現在でも「日経平均株価」の構成銘柄には銘柄ごとに旧来の額面制度を引き継いだ「みなし額面」が設定されている。この「みなし額面」を用いて、株価を旧50円額面の株価水準に換算しているのだ。このように、「日経平均株価」は「ダウ式平均」を用いる指数ではあるが、分子の計算は構成銘柄の株価の単純合計ではなく、「みなし額面」で株価水準を揃えた修正株価の合計を用いる点が「ダウ平均株価」と異なる。

構成銘柄の株式分割・併合などがある場合、指数への連続性を確保するために分母である除数を調整するのは「ダウ式平均」の特徴であるが、現在の「日経平均株価」の算出方法では、除数の変更が行われないこともある。2005年6月以降、「日経平均株価」の算出上、大型の株式分割や併合に対しては除数の修正を行わず、みなし額面を修正することで連続性を維持させるようにしている。このように除数修正の手法も現在は「ダウ平均株価」と異なる。

加えて、銘柄数も大幅に異なる。「日経平均株価」は225銘柄で算出されるのに対し、「ダウ平均株価」は30銘柄の平均である。構成銘柄が少ないため、「日経平均株価」より「ダウ平均株価」は個別銘柄の影響を受けやすい。なお、正式には「ダウ工業株30種(Dow Jones Industrial Average)」と呼ばれ、“工業(Industrial)”の言葉が含まれるが、工業以外の会社も多く含まれている。金融のVISAやゴールドマン・サックス、外食産業のマクドナルドなどが含まれている。