あれは私もいけなかったと反省しているし、3人にも謝ったんですけど……」
妻との関係がよくないと思ったことはなかった。娘たちが大きくなってからは、夫婦ふたりで映画を見に行ったり、土曜日はブランチと称して近所のカフェに出かけたりもした。近所の人からも「仲良し夫婦」と見られていたはずだとノブヒコさんは言う。
◆「あなたは肝心なことからいつも逃げていた」
離婚届を差し出した妻に、「どういうことなの」と尋ねると、妻は「こういうこと。いつかはひとりになりたかった」と言った。
「妻が言うには、問題は2つあると。ひとつは妻自身が結婚というものに向いていないと思っていること。そしてもうひとつは、私と一緒に暮らすのが限界だということ。
後者について具体的に尋ねると、『あなたは肝心なことからいつも逃げていた』というんですよね。私はそんなつもりはなかった。中学生だった長女が不登校になりかけたとき、妻はヤイヤイ言ったけど、私は見守ろうと言った。結局、長女は私が連れて行ったカウンセリングの先生と話が合って、うまく学校に戻ることができました。妻は『私が細かく話を聞いたからよ。あなたはカウンセリングに連れていっただけで、娘と正面から話そうとはしなかった』と。
だけど思春期の子が、親にそれほど具体的な話をするとは思えなかったんです。だから私は信頼していることを伝えて、あとは緩く見守っていた。妻としてはそれが不服だったようです」
何年前にはこんなことがあった、あなたはこんなことを言ったと、妻から膨大(ぼうだい)な指摘を受けた。だが、彼はほとんど覚えていなかった。
「週末の夜は私がよく料理をしていたんですよ。そのときは妻も娘も喜んでいたのに、『実際はそれほどおいしくなくても、おいしいと言わないといけない圧があった』と言い出して。それならそのときに言ってくれよという感じですよね」
◆話し合いが足りなかった