そう言われたとき、幼少時代の頃の自分の気持ちや感情を振り返り、ハッとしたのです。私は母のことを働いている、働いていないで判断したことは一度もありませんでした。
そして料理に楽しそうに取り組む姿、子どもたちのことを考えながら料理をしてくれている苦労や努力が垣間見えたとき、「勉強やスポーツにおいて努力と工夫は重要なのか! 私も考えながら頑張ろう!」と確信したのです。そうです、母は頑張る姿勢のお手本を、日々の料理によって見せてくれていたのです。
ひとつだけ母が誤解されないためにも、これだけはお伝えしたいのですが、母は仕事をしなくても父が稼いでくれるからという理由で仕事をしていなかったわけではありません。当時の社会環境の中で、思うような仕事ができずに引け目を感じることもあったようです。
しかしながら今でも記憶として深く刻まれているのは、料理をする姿勢を大切にしながら、笑顔で子どもたちに寄り添ってくれたエピソードばかり。母からはさまざまな工夫法を聞きましたが、ここでは私がもっとも印象的に感じた2つのスタンスについて絞ってみることに。
それは、「好きな料理と嫌いな料理をどちらも一生懸命作ってみる」というものでした。
◆母の工夫①家族が好きな料理を一つ決めて練習を重ねる母⇒餃子作りを極めよう!
私たち⇒コツを調べる、練習を重ねる、集中して取り組む姿勢を教わった
ひとつ目は、家族が大好きなメニューを徹底的にこだわるということでした。例えば餃子。中身の野菜と肉の比率や水分量、塊肉からたたいて作る工夫、調味料の塩梅、皮の食感や厚さに至るまで、レシピを調べながら何度も試行錯誤を重ねていました。「練習すればうまくなる」という考え方を、好きな食べ物で証明することには大きな説得力がありました。