そして、満を持して「全員犬死62時間前」の大書きが画面を埋め尽くすわけです。
たまらんね、たまらんのよ。
今回、キイチが絵を描いて詐欺師から1億のカネを引っ張ることに成功するわけですが、そのプランには知略が尽くされているのに、最後は結局ケンカの強さで切り抜けてしまうところなんて、実に潔くて素敵です。
3日で5,000万円の課題に対して倍額回答をしてみせたキイチでしたが、そのプロセスにおいて警察しか持っていないはずの名簿を使ったのがマズかった。詐欺集団「幻獣」の幹部のひとりである朱雀(白石聖)の差し金によって兄妹そろって拉致されてしまい、今度は電ノコで首を切られそうなところで「最悪だ……!」とキイチが叫んで、次回へ。どうせまたすぐピンチを脱するし、また新たに絶体絶命のピンチが訪れることでしょう。
■熱情を記号化していく
演出だけじゃなく、脚本もちゃんと香港ノワールをなぞってる感じがするんです。絶体絶命のピンチが訪れ、とりあえずその場だけ乗り切ればいいだろうという程度の無理筋の逃げ道を用意しておいて、その直後に強引につじつまを合わせてくる。あくまでリズムと振り幅重視のジェットコースター。
絆だったり裏切りだったりという熱量の高い感情を次々に記号化して積み重ねていく作劇は、どうしたってジョニー・トーの世界観を彷彿させます。
この時代に日テレが香港ノワールをド正面からドロップしてきた意図はよくわかりませんが、とにかく作ってる人が好きで研究してきたことが伝わってきますので、一緒に楽しもうという気にさせてくれます。とりあえずしばらくは、土曜の夜に新作の日本語ノワールが見られるわけで、ありがたい限りです。竜星涼くんも『ACMA:GAME』(同)のときはどうしようかと思ってたけど、今回の役はけっこう好きよ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)