◆食べる系ドラマ作品にしか見えない

『ヤクザと家族』(2021年)での硬派なやくざ役から、いかにもふてぶてしいキャラクターのドラマプロデューサーを演じた『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日、2021年)まで、役柄の幅が地味に広い。食べることでいうなら、向井理と共演した『先生のおとりよせ』(テレビ東京、2022年)の中田くるみ役は最高のはまり役だった。

 向井扮する官能小説家と毎回お取り寄せグルメに仲良く舌鼓を打つ同作の漫画家役は、ちょうど『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)の内野聖陽が担っているように柔らかな役どころ。「何これ!」とあまりに柔らかな食レポに正直笑ってしまいそうにもなるが、北村と食べる系ドラマ作品との相性は折り紙つきである。

 松重豊主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京、2012年)以来、男性俳優、女性俳優問わず、ひとり飯を満喫するドラマ作品は量産されている。玉石混淆の中、北村が仏頂面キャラを生かした、ひとり飯&誰かとの共有飯しっぽり飲み系ドラマ主演作『たそがれ優作』(BSテレビ東京、2023年)は、北村ファンにはたまらない大好物ドラマだったろう。

 その意味でも『おむすび』は、橋本環奈主演の朝ドラではあるけど、もうこれは北村有起哉の食べる系ドラマ作品にしか見えないのだ。

◆北村有起哉推しで見たらめっぽう面白くなる

 第1回の食卓では、結の祖父・米田永吉役の松平健との掛け合いで、さらに北村有起哉の食べる姿がぐんぐん引き立つ。松平の食べっぷりもなかなか魅力的で、毎食、結を挟んで、左右の席に聖人と永吉が座る。この位置関係でちょっとした小競り合いがある。

 第2回の夕食場面。画面奥の永吉が焼酎の水割り、画面手前の聖人がビールをそれぞれ飲んでいる。聖人側すぐ近くのテレビ画面には野球中継が写り、応援するダイエーが点数を取られるごとに、永吉が「かぁ~~~」とひとり声をあげる。