著しい日本株と日本経済のかい離

国内すなわち国境の内側での経済活動がどのくらいあるかによって、その国で生み出される付加価値、つまりGDPを生み出せるかが決まる。この付加価値が毎年どのくらい増えそうかを見れば、この先どのくらいの速度でGDPが大きくなるかが分かる。これがその国の経済成長率となる。
 

このため、日本経済と日本の株価の乖離は大きなものになる。なぜなら、総じてグローバル企業の時価総額が大きいのは、在外子会社で利益の多くを生み出しており、連結ベースで見た場合の利益成長が期待されているからである。更に株式市場において、外国人投資家の存在感が高まっていることも影響している。例えば、世界経済に良い見通しが立てば、外国人投資家のリスク許容度が高まることから日本株買いも活発化し、逆に世界経済の雲行きが怪しくなれば、外国人投資家のリスク許容度が低下することから、日本株投資は手控えられることになる。

このように、日本企業の業績や株価は日本経済の動向のみでは決まらなくなっている。つまり、企業業績や日本株が好調だからといって、日本経済が好調とは決めつけられない。逆に、日本経済が悪いからといって、日本企業や日本株が同じように悪いとも決めつけられないだろう。

人口減少と経済のグローバル化が不可逆的となっている状況下において、日本企業はより一層経営のグローバル化を進めており、それに伴って企業業績は日本経済から乖離していくことになる。最早、グローバル経営を図る日本企業の『企業業績』と、国内の経済活動を示す『GDP』は明確に分けて考えなければならない状況といえる。

更に、日本企業がグローバル経営を志向して企業業績を高めると、日本における経済活動が空洞化してしまう恐れもある。企業が海外に現地法人を設立して海外進出しても、国内の雇用は増えず、国内の雇用が海外に奪われることになる。

それは、すなわち国内の雇用機会が失われることを意味する。連結ベースで日本企業が儲かっていても、それに伴って日本の雇用環境も良くなる訳ではない。より良い事業環境を求めることはグローバル競争をする企業にとって当然のことだが、日本経済にとってはダメージとなる可能性もある。

昔は日本経済と日本企業の業績は極めて強い関係にあった。しかし最近では、グローバル企業の連結収益のかなりの部分は海外拠点での実績であり、日本経済との連動性は乏しくなりつつある。すなわち、『日本企業』と『日本経済』は明確に分けて考えなければならなくなっていると言えるだろう。

文・永濱利廣(第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト)/ZUU online

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