2020年、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに家計を見直し、資産運用を考え始めた人は多いと言います。
しかし、いきなり資産運用を始めるといっても、ハードルは高いもの。そこで、お金の専門家である「ファイナンシャル・プランナー」の上山由紀子(うえやま・ゆきこ)さんに、資産運用のコツをインタビューしました。
その内容を前編・後編にわたってお届けします。
前編はこちら。
専門家プロフィール
上山由紀子(うえやま・ゆきこ)
上山FP事務所 代表
ファイナンシャル・プランナー(1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®)
鹿児島県曽於市出身。会社勤務時代からファイナンシャル・プランナー資格取得を目指して試験に挑戦。2017年度に上山FP事務所を開設した。「生涯現役、顧客本位」をモットーに、相談業務やセミナー講師、執筆などの活動をしている。また、3年前より傾聴のボランティア講習会等を受け、勉強を続けている。
iDeCoを始める時は「目的」「運用方針」を考えよう
—— 老後の資産形成手段として「iDeCo」が注目されています。資産運用の第一歩としてiDeCoを始める人も多いですが、iDeCoをこれから始める方へアドバイスをお願いします。
iDeCoの目的は老後資金を貯めることです。まず考えていただきたいことは、あなたの老後資金はいくらあればいいのか、ということです。
あなたの老後の月々の生活費がいくらなのかをまず考えましょう。そして、公的年金や退職金、現在の貯金では足りない資金はいくらなのかを計算し、その目標額にむけて運用計画を立てましょう。目標額に達したら、元本確保型である定期預金に移し資金を確保しましょう。
もう一つ大切なことは、運用方針を決めることです。難しく考えなくても大丈夫。全世界にバランスよく分散投資し、手数料の低いファンドを選び、積み立てていくことをおすすめします。
——iDeCoをこれから始める方へ向けて、金融機関選定のポイントを教えてください。
まず、あなたが投資してみたい商品はあるか、確認してください。リサーチには「iDeCoナビ」や「モーニングスター」などがおすすめです。そこで金融機関をいくつかに絞ったら、実際に金融機関のホームページをチェックし、手数料が低いかどうかを確認しましょう。
最後に、あなたのライフスタイルにあったサポートを準備しているか、インターネット上で見たときに操作しやすいかどうかも大切です。iDeCoは長期でお付き合いする金融機関になりますから、最初が肝心、気になることがあれば、コールセンターに問い合わせしてみるのもいいですね。なぜなら、繋がりやすさは本当に大切だからです。最後にもう一つ、お金を引き出すときのことも考えておきましょう。できれば、一時金受取と年金受取と併用できる金融機関をおすすめします。
2022年から予定されているiDeCoの制度変更とは?
——iDeCoを含めた「確定拠出年金」の今後予定されている制度変更について教えてください
確定拠出年金が2022年(令和4年)から改正されます。
1つ目は、加入可能年齢の引き上げです。iDeCoが「60歳未満」から「65歳未満」へ、企業型確定拠出年金は「65歳未満」から「70歳未満」となります。
2つ目は、受給開始時期の選択の上限年齢の引き上げです。公的年金の受給開始時期の選択を75歳まで引き上げるのに併せて、確定拠出年金の受給開始時期の上限年齢を75歳に引き上げられます。
このような制度の変化に伴い私たちも自分たちの「引退年齢」を考えることが大切になってくるでしょう。現在ではより多くの人が長く多様な形で働く社会へ変化しています。こうした中、長生きリスクを考えるとこれからは長く働くことが大切です。社会保険制度に加入して長く働くと、それだけ老後の年金受給額も増えます。給与収入があることも大きな支えになります。
「つみたてNISA」「NISA」を始めるポイントは?
——つみたてNISAを始める際のアドバイスをお願いします
つみたてNISAで運用する「目的、期間、金額」を決めてみましょう。はじめて投資をする方は、低コストのインデックス・ファンドで全世界に分散投資することをおすすめします。自分で何を選んだらいいのかわからない方は、バランス型のファンドもおすすめです。
金融庁のwebサイトには投資の基礎知識のページがあります。そこには資産運用シミュレーションがあり、「将来いくらになる?」「毎月いくら積立てる?」「何年間積立てる?」3つのシミュレーションがあります。選んでシミュレーションができます。この計算をすることにより期間や積立金額等が把握できるのではないでしょうか。ぜひ、試してみてください。
——つみたてNISAをこれから始める方へ向けて、金融機関選定のポイントを教えてください。
金融機関を選ぶときのポイントは投資できる商品数が多数あり、低コストであることです。つみたてNISAは20年間という非課税枠があります。金融機関との長いお付き合いをすることになります。インターネット上での画面の見やすさ使いやすさ、質問等に丁寧に答えてくれるところを選びましょう。
——NISAをこれから始める方へ向けて、金融機関選定のポイントを教えてください。
金融機関によって取り扱っている金融商品が異なります。まずはあなたの利用したい金融商品があるかどうかを把握することです。
たとえば、株式を購入したいならば、証券会社を選ぶ必要があります。あなたの投資スタイルに合った金融機関を選びましょう。
——2024年からは「NISA」と「つみたてNISA」が合体した「新NISA」がスタートします。新NISAについて、良い点・注意点などあれば教えてください。
新NISAは2階建ての制度に変更になります。
良い点は、非課税枠の運用が5年間延長になる(2023年→2028年)ことです。現在一般NISAを利用している人は新制度開始時、再度マイナンバーなどを提出しなくても新NISAに移行することはできます。また、1階部分で投資した商品は5年経過したあと、つみたてNISAに簿価ベース(取得価格)でロールオーバーできるので最長25年間非課税で運用することができます。
デメリットは、仕組みが複雑になったことです。
これまで、つみたてNISAは積み立て投資に特化、NISAは株式投資やETFなどに投資ができる、とわかれていたものが、同じ制度に統一されることで、投資枠が複雑になります。
また、これまで一般NISAで株式投資をしてきた人にとっては、非課税枠がこれまでの一般NISAであれば120万円だったのが、新NISAでは株式投資の枠が102万円に縮小します。
——ありがとうございました。
文・fuelle編集部
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