映画はやはり悪役のキャラが立っていると盛り上がります。ディズニーヴィランであるゴーテルは「外の世界は危険がいっぱい。あなたのために言っているのよ」とずっとラプンツェルに言い聞かせて育てたわけです。洗脳ですよ。

 それでもラプンツェルが「やっぱり外に出たい」と訴えると、「苦労して育てたのに」「どーせ、私は悪者ですよ」と自虐的な言葉を並べて、ラプンツェルを黙らせてしまいます。会話を続かなくさせるのが、うまいんですよ。ゴーテルみたいな毒親、けっこう身近にいるんじゃないでしょうか。

 ディズニーアニメって、振り返ってみると毒親がやたらと多いんですよね。『白雪姫』は母親に若さと美しさを妬まれて、毒殺されます。『シンデレラ姫』の母親は姉たちをかわいがり、シンデレラは召使い扱いされます。

 いやいや、『白雪姫』は継母で血が繋がっていないだろう、と思われる方もおられるかもしれません。でも、グリム兄弟が書いた初版本の『白雪姫』は、実の母親が美しく成長した我が子・白雪姫を殺害しようとします。あまりにも残酷すぎるとグリム兄弟にクレームが寄せられ、第二版から継母という設定に書き換えられたそうです。血が繋がっているがゆえの近親憎悪でしょうか。毒親、まじで怖いっす。

 幼少期に養育者とどのように接して過ごしてきたかは、成長してからもその人の中で人間関係のロールモデルとしてずっと残るため、毒親との歪んだ関係性で育った子どもは大人になり、社会に出てからも苦労することが知られています。毒親に育てられたことから、「自分も毒親になるのでは」と悩む人は少なくありません。

 毒親のせいで悲惨な目に遭った話題の映画キャラクターといえば、ホワキン・フェニックスが演じた大ヒット映画『ジョーカー』(2019年)でしょう。ジョーカーことアーサーは、養子としてメンヘラ系の女性ペニーに引き取られたものの、ペニーはすぐに育児放棄。さらに恋人が幼いアーサーを虐待しても、知らんぷりをしていました。アーサーが緊張すると笑いが止まらなくなるという神経症は、そうした幼少期の体験の影響もあるのではないかと思います。