この写真を見た人からはよく「着地する瞬間ですか?」と聞かれるのですが、猫は後ろ足から着地することもほとんどないです。着地するときは、前足の肉球を床に向けて着地します。前傾姿勢か横の体勢になり、手のひらから着地する。バレリーナみたいに二足歩行で爪先からの着地は絶対にしません。
シャッターを切るタイミングがあとコンマ何秒ずれていたら、この足のラインにはならなかったでしょうね。足も接地していなかったはずです。奇跡に近い写真だと思います。
◆ほかにも躍動感たっぷりの写真がたくさん
小野:オリンピックっぽいジン君の写真も人気がありました。この作品を、僕は『ブレイキン』と呼んでいます。
これも、横からピュっとジャンプして着地した瞬間です。先ほども言ったように、やっぱり着地するときは絶対に手のひらからです。あと、『ロックスター』というタイトルをつけた写真もおもしろいですよ。
――おぉーっ、これはすごい!
小野:ジン君が歯磨き用のおもちゃを持っている写真です。噛むと歯垢が取れるロープのおもちゃで、彼はこれを振り回して遊ぶのが大得意。このおもちゃをぶん投げて遊んでいる瞬間ですね。
――顔もいい表情をしていますね。
小野:“猫界のフレディ・マーキュリー”と僕は呼んでいます。
――たしかに、フレディみたいに右腕を突き上げていますね(笑)。
◆本職は写真家ではなかった!
――ところで、小野さんはもともと写真がお好きだったのですか? それとも、猫を飼うようになってから写真活動を始めた?
小野:写真を見るのは好きでしたが、撮るようになったのは田代島に通い始めてからです。
――本職は写真家ではない?
小野:あ、全然違います(笑)。
――ただ、小野さんには「アドビ猫フォトコンテスト2021」最優秀賞や「Sony World Photography Awards 2023」Japan National Awardsなど多くの受賞歴があります。これらの賞はすべて、猫の写真で獲得したのでしょうか?