小野:ただ、私の持論なんですが、こういう写真はどんな猫でも撮れると思うんです。猫の習性は個体差がそんなに大きくないし、興味があるものにはやっぱり興味を示すので。

たとえば、『シュワッチ!』は紐で遊んでいるときに撮った写真です。田代島で猫の世話を20年以上やっている方に聞いたのですが、その人は「猫は紐に飽きない」と言っていました。紐はまっすぐ垂らすと蛇みたいに見えるし、ちょろちょろっとすればミミズみたいになるし、跳ねさせると虫みたいになる。操り方次第では、いろんな形でアピールできます。

あと、猫それぞれに好きなおもちゃがあるのでそれを知っておくのも重要ですね。そのためには常に猫とコミュニケーションを取り、どんなおもちゃが好きなのかを把握してあげる。だから、猫とよく遊んであげるのが1番のコツかなと思います。そして、なによりも猫の習性を知っておくこと。この写真を見てください。

左側のウミちゃんがファインダーのちっちゃい穴を、右側のジン君がレンズフードの大きい穴を覗こうとする瞬間
左側のウミちゃんがファインダーのちっちゃい穴を、右側のジン君がレンズフードの大きい穴を覗いている
――かわいい!

小野:この写真は猫の習性を利用しました。猫って穴に入りたい動物なんですね。どんなに小さい穴でも、自分が入れないような穴でも、覗いてみたい気持ちがある。例えば、トイレットペーパーの芯をポンって置いておくと、気になって見ようとするんです。

この写真は、左側のウミちゃんがファインダーのちっちゃい穴を、右側のジン君がレンズフードの大きい穴を覗こうとする瞬間を捉えました。最初は「どちらかがファインダーを覗いてくれたら、猫が猫を撮っている写真になるな」と考えていたんです。でも、たまたま2匹同時に覗く場面を撮ることができた。奇跡だったと思います。

◆まるでバレリーナ!

バレリーナのようなポーズ
小野:そして、ウミちゃんがバレリーナになっている写真。彼女は紐が大好きなので、頭上に紐を垂らしてあげました。それを掴もうと飛び上がっている瞬間です。つま先立ちの体勢になっているのか、いないのか。それがバレリーナに見えるか否かのポイントです。実際につま先立ちはしていませんよ。猫は絶対につま先立ちができません。ジャンプする瞬間を捉えているだけで、立ったわけじゃないです(笑)。