「私のこの力があれば、さしあたっての危険は避けられます」

 昭和初年、鹿乃子は九十九夜町という町にたどり着きます。

 その町で出会ったのは、貧乏探偵の左右馬(鈴鹿央士)という男でした。左右馬は飯屋でお釣りをちょろまかした子どものウソを見破った鹿乃子に興味を持ち、自分の探偵事務所の女中部屋を貸してやることにしたのです。

 翌朝、その子どもが姿を消すという事件が発生。自分がウソを見破ったことがきっかけだと思い込んだ鹿乃子はうろたえますが、左右馬はさまざまな状況から子どもの居場所を推理し、鹿乃子の能力も借りて無事、子どもを親元に帰すことができました。

 今まで、人を傷つけることしかできなかった鹿乃子の能力が、初めて人の役に立った。左右馬はその能力を「便利だ」と言って、鹿乃子を探偵助手として雇い入れるのでした。

 さて、ウソを見抜ける人がいたら謎解きが楽しくないんじゃないかという懸念を先に書きましたが、今回、鹿乃子の能力は謎解きに使われるわけではありませんでした。今まさに人が殺されようとしている現場に立ち会い、その能力によって殺人事件を未然に防ぐという役割を与えられています。

 そして、鹿乃子が事件現場に現れたのは偶然ではなく、左右馬が優れた推理能力によって導いています。おおまかに探偵の左右馬が解決のお膳立てをして、鹿乃子の能力が切り札として使われている。そのどちらが欠けても、子どもは殺されていた。2人がコンビを組むきっかけとなるエピソードとして、実に説得力のあるお話だったと思います。

■「固くこだまして耳を打ちます」

 コミック原作の実写ドラマ化というと、どうしても「ううっ」と頭を抱えたくなってしまう昨今のドラマ業界ですが、『嘘解きレトリック』の第1話はきっかりコミックの第1話を踏襲しています。むしろ、コミックの描く昭和初期の世界観を、テレビ画面の中でより華やかに立ち上げていると言っていいでしょう。エピソードもつまむところはつまみ、膨らませるところは的確に膨らませて、より豊かな作品に仕上がっているように見えました。