仮に精度100%のウソ発見器があったとしたら、この世の中にミステリーというジャンルは存在しなかったんじゃないかと思うんですよ。例えば人を殺した犯人が被害者の死体を埋めて隠したり、現場にいたのにいなかったかのようにアリバイを工作したり、どうやっても自分には殺せないという状況を提示するために密室を作ったり、そういう犯人側の行為はすべて「殺していない」というウソをつく前提で行われているわけです。

「殺していない。その証拠に、死体がないだろう」

「殺していない。その証拠に、私はこのとき別の場所にいた」

「殺していない。その証拠に、現場に私が立ち入ることは物理的にできないはずだ」

 そのウソに信憑性を持たせるために、犯人はあらゆる工作をする。刑事や探偵は、そのウソがウソであることを証明するために、知恵を絞る。

 確実にウソを見抜けるウソ発見器があれば「殺したか?」「埋めたか?」「あなたはそこにいたか?」と、多くても5個くらい質問をすれば証拠が揃ってしまう。だから、ミステリーというジャンルを楽しむためには、人のウソは簡単に見抜けないという前提が必要になるわけです。

 さて、今期の月9『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)は、100%ウソが聞き分けられる女の子のお話だそうです。その女の子が探偵とコンビを組んで事件を解決していくミステリー。どんな感じになってるんでしょうか。振り返りましょう。

■能力を謎解きに使うわけじゃなかった

 時は大正末期、山間の村に産まれた主人公の鹿乃子(松本穂香)は、小さいころから周囲に疎まれて育ちました。ウソを聞き分けられることで村人からは「バケモノ」扱いされ、孤独な幼少期を過ごします。

 やがて奉公に出ることになった鹿乃子に、母親は「いつでも帰っておいで」と言って肩を抱きます。その言葉さえ、ウソだとわかってしまう鹿乃子。ハラハラと涙を流し、もう村には戻れないことを悟るのでした。