海の向こうでは大谷翔平が前人未到の「50本塁打&50盗塁」をクリアし、合わせてトリプルスリーも達成。ケタ外れの数字でMVPが確実視されているが、翻って日本プロ野球に目を向けると、スケールの乏しさは否めない。試合数が違うとはいえ、ホームラン30本以上はセ・パともに1人ずつ(9月終了時点。以下同)。打率3割を超えているのはセ・リーグが2人、パ・リーグが1人。あまりにもショボい数字だ。
「ここ数年、日本球界は投手優位ですが、2024年はとりわけ顕著。昨年の全球団の総本塁打数は1200本台でしたが、今年は1000本に達しない見込みで、打力低下が目につきます。解説者たちは、ボールの回転数を測る機器を導入したこと、育成メソッドの確立で球速が上がったことなど、投手の進化を理由にあげていますが、同じ状況のメジャーのホームラン数は減っていない。NPBは頑なに否定していますが、飛ばないボールを使っているとしか思えません」(フリーの野球ライター)
各球団のチーム打撃成績を見ると、広島の総本塁打数は51本で、54本塁打の大谷以下。一方、西武はチーム打率が.211、1試合あたりの得点が約2.4点と、稀に見る貧打線だった。それならスピードを生かした攻撃が展開されているかと思いきや、盗塁数も激減している。
「今季のタイトル争いを見ると、極端に低レベルなのがセ・リーグの盗塁王争いです。現在トップは近本光司(阪神)ですが、盗塁数はわずか18個で、2リーグ制以降の最少記録更新は確実。ルールが違うので一概に比較は出来ませんが、大谷が9月だけで16盗塁したのを見ると、いかにも寂しい数字です。理由の1つは近年、投手のクイックの重要性が見直され、技術が一気に上がったこと。これによって戦術も変わり、ギャンブル性が高い盗塁は避けられるようになっています」(同上)
ホームランや盗塁が少なくても、前回のWBCを制したのは日本。1つ1つのプレーを大切にするチームの強さは結果が証明しているが、一部からはこの傾向を危惧する声も上がっている。