増え続けるデフォルト、金融システム不安も

中国の金融市場の変調が実体経済へ与える影響も気がかりだ。中国の4~6月期のGDP(国内総生産)は前年同期比6.7%増と3四半期ぶりに減速しているが、問題はむしろこれからと見られている。

まず、米中貿易戦争の影響が最も色濃く現れるのは設備投資と考えられる。トランプ政権は中国のハイテク産業を中心に制裁を科していることから、民間製造業の設備投資が抑制される公算が大きい。中国政府は民間の設備投資の失速を見込んでインフラ投資を拡大してくることが予想されるものの、内需の弱さをどこまでカバーできるのかは未知数だ。

また、中国でデフォルト(債務不履行)が急増していることも景気の先行きに暗い影を落としている。ブルームバーグの試算によると中国では2018年6月までに約165億元がデフォルトに陥っており、これは過去最大を記録した2016年の207億元の約8割に相当する。中国政府はシャドーバンキング(影の銀行)への対応を厳格化し、企業のレバレッジ解消に取り組んでいるため、増え続けるデフォルトが金融システム不安を引き起こすのではないかと心配されている。

米中貿易戦争の最大のメリットとは?

米国では11月に中間選挙を控えており、トランプ大統領が選挙対策として「中国叩き」を一段と強めるとの観測もある。中間選挙では民主党が下院で逆転するとの見方が増えており、共和党の上下院独占が崩れる可能性がある。そうなれば、減税はもちろんのこと、すべての法案が阻止される公算が大きい。それでなくとも民主党はロシア疑惑に絡んで大統領の弾劾手続きに入る構えを見せており、トランプ大統領自身の立場も苦しくなる。ウォール街の市場関係者からはトランプ大統領が背水の陣で臨むにあたって「中国を悪役に仕立てる戦術にでるのではないか」との見立てもある。

「貿易戦争に勝者はいない」ウォール街ではそんな見方が多く、米国にとっても経済的メリットは小さいと考えられている。だが、トランプ大統領にとっては自身の保身と中間選挙に勝利するという意味で中国との貿易戦争で得られるメリットは大きいということなのかもしれない。

文・スーザン・グリーン(NY在住ジャーナリスト)

【こちらの記事もおすすめ】
女性を超える関心度!?「オトコの美活」意識調査結果
住宅ローン控除(減税)をフル活用するための基本の「き」
実はハイリスクなライフイベントTOP5。転職、住宅購入、結婚……
2018年マンションの「駆け込み」需要が起きるってホント?
じぶん時間がもっと増える「ちょこっと家事代行」3選