◆逆転金メダル直後の中継は神がかっていた

 ナビゲーターとしての内村は、放送スタジオから現地実況を求められても、客観的事実はほとんど交えない。オリンピック選手時代の自分の気持ちなど、過去の五輪大会でメダルを獲ったあとみたいに爽やかに話す。その間、あのニヤニヤした表情がたまらなくキュートに、魅力的に写る。

 コメントもニヤニヤもある種、淡々と持続するのだが、日本時間の7月30日深夜に放送された男子団体決勝で、日本代表が逆転金メダルを獲得した直後の現地中継では、ここぞとばかりに内村節が神がかっていた。

 左手人差し指で「1」とジェスチャーして「いやもう」と言葉につまる内村。潤んだ瞳は激烈な興奮を秘めていた。「僕も優勝した気持ちになってました」と一呼吸しながら脱力してコメント。後輩世代の男子団体が金メダルに輝いた事実を受けて、自分もその一員かのように目をきらきらさせる。この「僕も」に対して、今は五輪選手じゃないんだからなんてまったく思わない。

 スタジオの谷川翔から「金メダル獲ったときの表彰式はどんな感情だったのか」と聞かれ、「その瞬間だけ自分が中心に世界が回ってる」と内村は答える。この中継では水を得た魚のように言葉がどんどん溢れ出る。日本代表選手の最良の代弁者として、伝える側の興奮を隠さない内村航平のコメントがこうも神がかるとは。