帝というのは、人々のこれからを考える立場。そんな方が自分の過去ばかりを思っていることは良いとは決して言えない。それを勧める伊周もいかがなものか。伊周は国のことはどうでもよいのだろうな、と思わずにはいられない。

◆才を垣間見せ始めるまひろ

NHK『光る君へ』第30回
一方、まひろは藤原公任(町田啓太)の屋敷で月に一度、和歌を学ぶ会で指導を行っていた。そこではまひろは自分が書いた「カササギが人間の世界で見聞きしたできごとを語る」という『カササギ語り』を披露していた。女房たちからも評判で早く続きが読みたいとせがまれるほど。

のちの和泉式部であるあかね(泉里香)は『枕草子』よりも『カササギ語り』のほうがおもしろいと言う。そんな女房たちの言葉にまひろは喜びを感じていた。

『枕草子』もそうだけれど、物語やエッセイが人の心を動かすという様子は観ていて嬉しくなる。書いている本人はもっと、だろうけれど、清少納言はどうだろうか……と今回は出番がなかった彼女に想いを馳せる。まひろは書くのが楽しい様子だけれど、清少納言は定子を助けたいという必死な想いが原動力につながったから……。

しかし、そんなまひろの物語を娘の賢子(福元愛悠)が燃やしてしまう。文字の読み書きを厳しく教えているまひろ。それが彼女のためだと信じて疑わない。一方で物語も書いているときは、賢子の相手をしてやれない。為時がたっぷりと賢子を甘やかしているようだけれど、賢子が求めているのはまひろだ。

自分の思い通りにならないからと言って、燃やすだなんて危険なことをしてはいけない、とまひろは叱る。泣きじゃくる賢子だけれど、言葉で伝わる年齢ではないような。

お互いに思い通りにならない部分があり、すれ違いもあるのだろうな、と想像。そんな母との関係性が賢子の人生にも影響を与えそうだ。

◆物語が政治を動かす?

倫子(黒木華)もまた、やるせない思いを抱えていた。一条天皇が彰子(見上愛)に見向きもしないのだ。娘を哀れに思った倫子は一条天皇に直談判。しかし、一条天皇は彰子が自分を受け入れていない、と言う。ふたりが一緒にいるシーンは少ないが、どうもコミュニケーションが少ないようだ。彰子は自分から積極的に話をするほうではないことも影響しているのだろう。