そして彰子が命がけで産んだのは皇子。道長の地位を盤石にする存在となる。彰子を取り巻く人たちとしては、「でかした」という心持ちだろう。笑顔がこぼれる。
その中で、道長だけは複雑な表情を浮かべていた。皇子が生まれれば、今の力関係が変化する、争いが生まれる、と思ったのか。道長のその胸中を察したのは、まひろだけだったかもしれない。
◆想いを隠せない道長の人間臭さ
彰子に慕われ、信頼されているまひろもまた、その地位は確固たるものになろうとしているように見える。まわりからの妬みは日に日に大きくなっていくばかりだろうが……。
道長もしばしば、まひろのもとを訪れる。いろんな女房が見ているとも知らずに。もちろん、おおっぴらにイチャつくわけではないけれど、どう見ても思いを隠しきれていないのですが……。
となると、道長とまひろの関係を怪しむ左衛門の内侍(菅野莉央)が赤染衛門(凰稀かなめ)に告げ口したり。不穏である。
しかし、道長はそんなことは気にしない。まひろに会いに行くし、仕事を頼むし、一緒に月を眺めちゃったりする。
極めつけは若宮誕生50日の祝いの席。無礼講だということで、酔っぱらう男たち。女房たちはみな迷惑そうな表情を浮かべている。そんな中、まひろに絡む公任(町田啓太)。ここに若紫はおらんのか、と言う公任にまひろは「ここには、光る君のような殿はおりませぬ。故に若紫もおりませぬ」と返すまひろ。全く甘くないやりとりなのだが、その様子を遠目に見た道長はまひろに声をかけ、歌を詠めと言う。その歌に気をよくしたのか、道長はすぐに返歌を贈る。ちなみにこの場には彰子も倫子もいる。
夫婦になる前に、歌を贈り合うこともしなかった道長が、こんな振る舞いをすること自体、倫子からしてみれば信じられないのでは……。
どうにもまひろが関わると冷静でいられない道長である。そんなところが人間らしいが、火種を作りかねない。