人づきあいが苦手なまひろにとって、カルビイカは大切なコミュニケーション相手となっていきます。カルビイカを連れて外出することが増えたまひろの様子を、ちさとは温かく見守ります。

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい?

 映画の世界では、この「ぬい活」にはけっこうな歴史があります。その道の第一人者とされていたのは、実相寺昭雄監督です。特撮ドラマ『ウルトラマン』『ウルトラセブン』(TBS系)や映画『帝都物語』(88年)などで知られる実相寺監督は、「ちな坊」と名付けたアライグマのぬいぐるみを家族の一員(長男)として扱っていました。実相寺監督の年賀状のほか、『ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説』(90年)などにも登場しています。事情を知らない助監督がちな坊をぬいぐるみ扱いすると、現場は大変なことになったそうです。

 ぬいぐるみではありませんが、ライアン・ゴズリング主演映画『ラースと、その彼女』(07年)は、心優しく内気な主人公がアダルトサイトで購入したラブドールを恋人として家族に紹介し、一緒に暮らす物語でした。また、金子修介監督の娘、金子由里奈監督が撮った『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(22年)も、静かな話題を集めました。繊細な心の持ち主は、自分の悩みを人に打ち明けると、その人の負担にもなってしまうことを気にして、もっぱらぬいぐるみを相手に会話するそうです。「ぬいサー(ぬいぐるみサークル)」に集まる学生たちを描いたなかなかの衝撃作です。

 バイオレンスシーンを売りにした『ベビわる』ですが、現代社会を生きるZ世代の若者たちのナイーヴさ、生きづらさを感じさせる社会派ドラマな一面も見せた第3話でした。

 ちさと、まひろ、茉奈が街を歩いていると、ヤバい感じのおっさん(水澤紳吾)がわざとらしくぶつかってきました。いわゆる「ぶつかりおじさん」です。混雑したターミナル駅の構内などで、たまに見かけます。避けてもぶつかってくる、非常に迷惑なおじさんです。しかし、今回はぶつかる相手を間違えました。まひろたちに捕まって、おじさんは簡単に腕を捻り上げられます。