――おおたわさんのお母さんは、「もう薬物を渡さない」と宣告したら、今度は買い物依存症になってしまったわけですよね。テレビ通販で物を買いまくって、開けもしない段ボールで部屋がいっぱいになって。

おおたわ:そうなんです。依存症というのは、普通に生きることが苦しい人たちが、生きにくい暮らしや社会の中でなんとか生きていくための「自己治療」だと言われています。お酒の力や、ギャンブルの力なんかを借りて生きているんですね。だから、依存の対象を取り上げたり、やめるようにたしなめたりすることで依存症がかえって悪化することがあるんです。

最近の考え方としては、法的に問題がある薬物やアルコールを飲んで暴れるとかでなければ、依存症が全て悪いものと決めつけずに、緩やかに減らして依存と付き合っていく「ハームリダクション」という治療法があります。今は依存症の専門医もいますし、専門施設も相談できる機関もあります。依存症の根底には生きづらさがあるという、社会の理解がもっと広がるといいなと思っています。

<取材・文/大日方理子 撮影/山田耕司>

【おおたわ史絵】

東京女子医科大学卒業。大学病院、救命救急センター、地域開業医を経て現職。刑務所受刑者の診療にも携わる。また、情報番組などのコメンテーターとしても活躍。著書『女医の花道!』はベストセラーとなり、近著に『プリズン・ドクター』『母を捨てるということ』などがある