2020年10月5日、日本銀行は日本経済の需給ギャップについて、需要が供給を下回っている状態にあることを発表しました。今回(4-6月期)の試算はマイナス4.83%で、2009年のリーマンショック後に迫る勢いで急速にマイナスへと転じています。この記事では、需給ギャップとデフレについておさらいし、資産への影響とどのように資産を保有すべきかを考えてみましょう。
需給ギャップとは
需給ギャップは、国の経済全体の総需要(国内総生産=GDP)と供給力(潜在GDP)の差のことで、日本では内閣府と日本銀行が算出しています。今回の発表は年に4回(1、4、7、10月)発表しているうちの4回目です。
発表タイミングと集計期間に乖離があるものの、需給ギャップがマイナスになったのは3年9ヵ月ぶりで、コロナ禍が経済に及ぼした影響を如実に可視化した結果となりました。
このマイナスの状態はデフレギャップとも呼ばれ、専門家からは日本経済が再びデフレーションの状況になることを懸念する声が挙がりました。
デフレ(デフレーション)とは
ここで改めて、デフレーション(以下、デフレ)とは何かおさらいしましょう。デフレとは、世の中のモノやサービスの価格(物価)が全体的に継続して下がる現象(物価動向)のことです。
例えば、今回の新型コロナウイルスの影響を受けて景気が悪くなり、私たちが節約することでモノやサービスが売れなくなるとしましょう。企業はモノやサービスを売るために価格を下げ、こうしてゆっくり物価が下がり続けていくことをデフレと言います。
デフレになると物価が下がるのに対して同じ金額で買えるものが増えるため、モノに対するお金(貨幣)の価値は上がることになります。
デフレは、良いこと?悪いこと?
消費者にとってモノの価格が下がることは、一見好ましいことのように思えるかもしれません。
しかし、いったんデフレになると企業の収益が低下することで、業績の悪化につながります。企業は高い賃金を支払えなくなり、労働者は収入が減ることで消費が減退し、さらに物価が下がっていくというスパイラルに陥ります。
基本的に、経済成長のためには緩やかなインフレが望ましいと言われています。インフレ(インフレーション)は、デフレと反対の物価動向のことで、このとき物価は上がり、貨幣の価値が下がります。
日本経済はこれまで長い間デフレの状況にあるとされ、「緩やかなデフレ状態である」と政府が表明したのは2001年のことです。このような経済状況から脱却しようと、いくつもの政策が推し進められてきました。
2012年に発足した第2次安倍政権は「デフレからの脱却」を目指し、「金融緩和」と「財政出動」、「成長戦略」による経済政策「アベノミクス」を推進しました。しかし2020年、新型コロナウイルス感染拡大が経済の混乱を引き起こしました。