◆ひるなまは、通院しつつ取材していた
妻は強い人でした。特に『末期ガンでも元気です』(以下、『元気です』)に関しては、「私が描かずに誰が描く」という使命感は持っていたのではないでしょうか。主治医さんには、自ら作家であることを明かし、今日のことを描きたい、この部屋のことを参考にしたい、とお願いすることがしばしばありました。通院しつつ取材しているかのような……。『元気です』のなかで、大腸内視鏡に臨む際、ひるなまがメガネをかけるシーンがあります。
いつか描くかもしれない闘病記のため、病状はともかく「見られるところは見ておこう」と考えたそうです。
またあるときは、ずっと描いていて、あまりに部屋から出てこないんです。さすがに体に無理をかけすぎでは?と「頑張りすぎじゃない?」と声をかけました。すると、「頑張らないのは、無理よ」と返ってきました。なんとも頑固です(笑)。この後「根を詰め過ぎないでね」と言い換えると納得しました。言葉へのこだわりも、常々相当な強さを感じていました。