◆声と、ジェンダーギャップ

「寅子が地声とも言える低く安定した声色を使っていることは強烈なインパクトがあり、このドラマにはいままでと違う何かがある、と思わせるには十分でした。日本人女性の声は世界一高いという説もあり、実際に高い声を求められる傾向があります。女性たちは無意識のうちに声の高さを使い分けていますよね。“よそゆき声”という言葉もありますし」(瀧波ユカリさん 以下カギカッコ同じ)

瀧波ユカリさん
瀧波ユカリさん
メディアもそのジェンダーロールを強化する傾向にある、と指摘する瀧波さん。テレビから聴こえてくる女性の声はのきなみ高く、特にアニメでは成人女性の役に幼女のような声があてられることもめずらしくない現象が気になっているという。

声の高さ、は何を表しているのか。

「高い声が女性らしさ――幼さ、か弱さ、無害であることの証明として機能し、ほとんどの日本人女性が知らず知らずのうちにその価値観を内面化している。そんな社会的背景があるなかでの、寅子の声でした。朝ドラは、忙しい時間帯に音だけを耳で拾って楽しんでいる視聴者も多くいると思います。私と同様に、この声の低さにハッとして“いままでとは違う”と感じ取った人もきっといることでしょう」

連続テレビ小説 虎に翼 Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド)NHK出版
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しかも寅子はファーストシーンで、日本国憲法の条文を読み上げていた。1946年、戦争の爪痕が生々しい街を歩き、司法省(現在の法務省)に向かう。