◆直接の害はない、でも…
医薬品と違い副作用がない、という点をメリットと考える人もいるが、日本医学会のHPには「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています」と記載されている。何をよしとするかは、個々の選択だろう。
しかし医療事故を知ると、軽視はできない。有名なのは、2009年の「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」。助産師の指導のもと、ビタミンKを投与せずにビタミンKと同様の効果を持つと主張されるレメディ(砂糖玉)を新生児に与え、結果生後2カ月で硬膜下血腫が原因で死亡したのだ。
ダイスケさんは当時、ネットで軽く調べて「砂糖玉」という認識でいた。
「だから体に害はないだろう、とスルーしていたんですよね。ビンに気づいてから妻の様子を見ていると、咳がつづいたら、お腹が下ったら、いわゆる薬を使うタイミングで、子どもにレメディを与えているのがたびたび確認できました」
ところがある日、長女が高熱を出した。1歳のときである。
熱が40度近くまであがり、ぐったりしている。しばらく様子を見ていたが、もう病院へ連れていくべきだとダイスケさんは判断。しかし、妻がそれを拒否した。レメディを与えていれば、問題ないと主張する。
「つらそうにしている娘が心配で、とにかく一度診察を受けさせたいと必死で説得したんですよね。様子を見るタイミングは過ぎている。お願いだから、病院に連れていかせてくれと」
すると、落ち着いた様子で看病していた妻が突然、激昂した。
「うっるさああああーーいいぃ! そんな正論、聞きたくない!! 私を否定しないで!!!」
ホメオパシーで、心の平穏を取り戻す必要がありそうである。
◆妻の怒りポイント
ヒステリックに放たれる言葉を拾い集めて要約すると、療法のよし悪しではなく、「自分が否定された」というのが怒りのポイントであった。夫婦関係や育児のなかで積み重なってきた、わだかまりがあったのだろうか。