もちろんそれだけでなく、夏、弥生、水季、朱音……登場人物一人一人の発言や行動に対しても見事に賛否両論があって。ここまで意見が割れることは珍しいと感じましたね。生方さんの脚本の真髄が、人間を多面的に書いているところにあるからこその賛否だと分かってはいるんですけど。

――そういった意見によって、物語の展開に変更が加えられたことはあったのでしょうか?

村瀬:それはありませんでした。というのも、今回、生方さんは初回放送が始まるよりも前に最終話の初稿まで書き上げていたんです。いろんな意見が出てくることを見越していたのかもしれないですね。

それに僕自身も、例えどんな反応があろうと、それによって物語の展開を変えるのは違うと思っています。もちろん、いろんな意見に耳を傾け、受け止めた上で、自分たちが正しいと思う道を進んでいきました。

◆「ついに言います!」経堂を舞台とした理由

海のはじまり
――ところで『silent』では世田谷代田が、『いちばんすきな花』では桜新町が、そして『海のはじまり』では経堂と、再び小田急線が舞台でした。なぜ経堂に?

村瀬:皆さんから「なんで?」って言われるので、ついに言います。これはもう、僕が無類の世田谷好きだからですね。っていうか、僕自身が長く世田谷区に住んでるんです(笑)。あと、最終的には世田谷区長を狙っておりまして……というのは、冗談ですが。ちゃんとした理由もありますよ。

――(笑)。ぜひ教えてください。

村瀬:世田谷って、東京で一番人口が多い区だし、僕は愛知出身なんですけど、僕のような地方出身者にとって、世田谷区って東京のスタンダードがあるイメージなんですね。それに、土地勘があるからこそ、生方さんが描いた登場人物たちが「この街に住んでいそうだな」とイメージが浮かんでくるんですよね。

あとは『silent』で小田急さんにお力添えいただいて、それ以来、良い関係ができているというのも大きいです。今回もまた電車のシーンでお世話になっています。その最たるものが9話の夏と弥生の別れのシーン。あれは、絶対に実際の駅のホームで撮りたかったのですが、ご協力いただけて実現しました。あれは終電から始発までの時間で撮影させていただいたんです。