ところが、アンディの母親の勘違いで、バズたちは廃棄物扱いされてしまいます。ウッディも窮地に陥った仲間たちを見捨てられず、共に近所の保育園・サニーサイドへ逃げ延びることを選びます。ここなら、子どもたちと永遠に遊び続けることができるはず。おもちゃたちにとっての「理想の楽園」のように感じる、バズたちでした。

 ところが、サニーサイドのおもちゃの世界は、ピンク色の熊のぬいぐるみ・ロッツォが独裁支配する、恐ろしい管理社会だったのです。新入りのバズやジェシーたちは、おもちゃの扱い方をまだ知らない乱暴な子どもたちのクラスを請け負わされ、ボロボロになっていきます。理想郷とはほど遠い、生き地獄のような場所でした。

 これまではアンディの自宅で、平和に暮らしてきたおもちゃたちですが、外の世界を知り、さまざまな体験をします。ロッツォが支配するサニーサイドは、北朝鮮のような独裁社会を思わせます。サニーサイドから脱出するウッディたちは、ゴミ焼却所で地獄の業火で焼かれる恐怖にも遭遇します。このシーンは、第二次世界大戦中の強制収容所を思わせるものがあります。

 ウッディは西部開拓期に活躍したカウボーイをモデルにした正義感溢れる人形ですが、西部開拓期は米国人が誇るフロンティア精神を象徴した時代である一方、ネイティブアメリカンを迫害し、彼らの土地を奪い取っていった暴力に満ちた時代でもありました。そんな歴史は知らないウッディですが、ごく数日の間に、独裁政治や強制収容所といった近現代史における「人類の負の歴史」に次々と直面することになります。人間を模して作られた人形やぬいぐるみたちは、人間と同じように受難の歴史も背負うことになるのです。

 見た目は変わらないウッディですが、以前とは異なる存在となっていきます。単なるおもちゃではなく、故郷を離れるアンディを厳粛に送り出す父性的な一面を備えたキャラクターとなっていきます。物語の最後は、子別れ・親別れのシーンと言っていいでしょう。おもちゃは子どもたちのイマジネーションを育む、大切な存在であることを改めて感じさせます。

いつまでも童心を持ち続けたピクサー創業者たち