◆樋口さんの話はすごくリアルだった
――確かに、骨髄移植のドナーと聞くと、“いい人”と浮かびがちで、さらに“偽善者”へと繋がりがちです。でも本作を拝見して、彼女を見て、子育てしている個人としての姿などから素晴らしい人であることは伝わりますが、決して聖人ではなく、「自分の行為で誰かの命が助かるなら」というとてもシンプルな考え方の持ち主で素敵でしたし、だからこそ響きました。
松本「ありがとうございます。まさに私たちもそこをひとつのテーマとして思っていました。聖人には見せたくない、ひとりの女性の生き方のひとつとして描きたいと。なので、そうおっしゃっていただいて、すごく嬉しいです」
――そして、やはり白血病を発症して実際に骨髄移植を受け、寛解した俳優さんが主演を務めているというのはすごいことです。樋口さんとは、役柄的に共演シーンはほぼありませんけれど、直接お話を聞くお時間はありましたか?
松本「顔合わせ兼衣装合わせの時に初めてお会いしました。そのときに1から10までお話してくださいました。この企画をどうやって実現させていったのか、今日にいたるまでの思いや行動、当時のことも、その場で、本当に泣きながら教えてくださいました。本編にも登場しますが、実際に移植を受けたときの感覚もお聞きしました。
すごくリアルでしたし、樋口さんは、そうやって助かって、今こうして映画を作って人に伝えようとしているんだなと。思いの強さもですが、単純にひとりの人間として『すごい』と思いました」