短い一語の力強さが大地とともにあることがわかる。農業を通じて直に土に触れる松山がトマトを栽培し、葉かきする。その音は、遠く古代ローマ世界と図らずも共振する豊さを響かせているように思うのだ。

◆とにかく農業な理由

松山ケンイチ
momiji(株式会社 和光リリースより/Photo:Takio Horikawa)
 他の投稿のキャプションを確認すると、このトマトはパスタソース用に収穫すると書かれている。ほら、やっぱりイタリアなんだよ。松山ケンイチとイタリアン。自分で育てた作物を収穫して料理を作るだなんて、「その日を摘む」の最たる実践例だ。

 それはそうと、そもそも松山はどうしてこんなに熱心にトマトを栽培し、収穫してるんだろう? 心の故郷が実はホラティウスと同じ古代ローマ世界にあるから(出身は青森だから、同じ赤色でもりんごの赤が故郷の色だ)?

 それはほんの冗談として、2023年4月の投稿を見てみると「今年の農活動、始まりました」とある。トマトやスイカの種まきだ。でも待てよ、2024年最大の力作ドラマ『虎に翼』(NHK総合)に出演中にも関わらず、同作に関する投稿はほんのわずか。ここ数年は、ほとんど農作業の投稿ばかり。現在の松山が、とにかく農業な理由はいったい、どこに?

◆田舎と東京の2拠点生活

 2019年、松山は妻の小雪と3人の子どもたちとともに北日本で田舎暮らしを始めた。撮影で東京に行くときは単身赴任的な2拠点生活。田舎へ引っ越した理由として、「仕事と家族、趣味に充てる時間や気持ちの切り替え」のためだと語っている(『AERAdot.』インタビューより引用)。

 田舎ライフの中で本格的な農作業を始めるのだが、直接的なきっかけはある農家から送られてきたトマトジュースの味わいにえらく感動したこと。それで農家からビニールハウスを借りた彼は特にトマト栽培に比重を置いているというわけ。