そして、可愛いふたりの恋物語に新たな解釈を加えた岡田脚本が何より秀逸。原作でははっきりと語られなかった「なぜ小さくなったのか?」という問いに、「大切な人たちとお別れをするため」という切なくも愛おしい解が添えられました。
最終回でちよみの母・楓(木村佳乃)は東日本大震災を回想して「亡くなり方が悲しかったとしても、可哀想な人で終わらせちゃいけない。幸せな人にしなくちゃいけない。それができるのは生きている人」と、語ります。悲しい出来事や別れは、どうしようもなく突然訪れる。それでもちよみも南くんも可哀想ではない。ふたり自身も、ふたりを見守る周囲の人たちも決してそうさせない。優しさがいっぱい詰まった作品でした。
◆新宿野戦病院
そしてこの夏クールNo.1はやはり宮藤官九郎氏脚本の『新宿野戦病院』(フジテレビ系)ではないでしょうか。
「英語と岡山弁を混ぜてしゃべっていい日本人は藤井風だけ」のフレーズも話題になった破天荒な元軍医・ヨウコ(小池栄子)と、気取った美容皮膚科医・亨(仲野太賀)を中心に、新宿歌舞伎町にある「聖まごころ病院」の救急外来で起こる悲喜こもごもが描かれました。
◆令和を生きる人たちの「はて?」が露わに
宮藤官九郎氏は、強烈な登場人物たちをエンターテイメントとして魅力的に描きながら、その時代を、社会を絶妙に切り取る天才だと思います。本作においても、“多様性”という言葉ですべてを許容しているかにみえるイマに蔓延(はびこ)る“違和感”を物語のなかで浮き彫りにしていきました。
その違和感とは、出演陣が被りすぎとも取り沙汰された朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)のヒロイン・寅子(伊藤沙莉)風にいえば、「はて?」です。令和を生きる人たちが漠然と抱えるモヤモヤや不平等感に、ヨウコが「命は平等」と“雑に”寄り添ってくれる面白さがクセになっていきました。