日本での初個展!広島市現代美術館で「ティンティン・ウリア:共通するものごと」開催
『(Re) Collection of Togetherness[一体感の「再」集結]』は、2007年以降、段階的に形を変えながら発表されてきた、手作りのパスポートを使用した作品。同作で使用される、地球上のあらゆる国の複製パスポートは、ウリア氏のコレクションとして増え続ける。世界の国境は絶えず変化し続けるため、集める行為に終わりはない。また、パスポートの一部のページには、押しつぶされた蚊と血痕が表されている。所有さえできれば、国際移動を可能にするパスポートは同時に、自らが選ぶことのできない帰属の問題、種類(国籍)次第では、国境を越えられない可能性を孕むことを示唆している。
『Memory is Frail (and Truth Brittle)[記憶は脆弱(そして真実は脆い)]』は、100枚以上のドローイングからなるインスタレーション。空間(地理における)と時間(歴史における)の表現が、ループする物語として仕立てられる。ここではウリア氏の個人的な記憶と、さまざまな視覚芸術(映画等)から引用された、他者による記録とが交差し、世界に対する私たちの理解がいかに視覚的に構築され、記憶を通して記録されるかを問う。また、往々にして断片化される記憶を通して、現実がどのように形成されるのかを検証する試みでもある。
『Liminal Death[境界上の死]』は、ウリア氏が「移動」のシンボルのひとつとして取り上げ、しばしば作品に登場する「蚊」の変態に注目した作品。彼女が「境界上の死」と呼ぶのは、蚊の幼虫が水面で、蛹殻から羽化する瞬間に起こる死のこと。羽化中の状態でエタノールの中で保存されたこの蚊は、1965年にインドネシアで消息を絶ち、帰らぬ人となった、ウリア氏の祖父の存在と重ね合わされる。誰もが確信することのできない祖父の死は進行中であり、未完、つまり境界上の死を意味している。