加賀美はしかし、同時に「完璧なAI教師」の実現は不可能であることを悟り、その開発という仕事を中止して学校を去ることにします。開発室で「TEACH」と、秘書の一花(木南晴夏)と向き合い、重大な決断をすることになります。AIと、半AIと、人間。その3者の対峙は、今後私たちの社会が向き合っていくことになる「AI」とのかかわり方について、ひとつの回答を例示しました。
AI技術の活用と、人間同士の連帯と共生について。『ビリオン×スクール』はそういうことを丹念に、ひとつずつしっかりと、しかもフルスイングで、自分の言葉だけで語り尽くそうとするドラマでした。それは、腹をくくんなきゃできないことなんです。腹をくくってたんだよ、このドラマは。カッコよかったんだよ。
■売れてしまうんじゃないかリスト
山田涼介と木南晴夏はもうクソ売れているのでいいとして(もちろん安達祐実も)、このドラマを充実したものにしたのは生徒役の若手たちでした。まるで、すごくいい意味での役者たちのワークショップみたいに、みんなが次々に「あいつを超えよう」という芝居を見せていたように思います。
映画オタクの鈴木を演じた柏木悠は、確かに神木隆之介から『桐島』のバトンを受け取ったと思う。
クラスの女帝だった雪美役の大原梓は『リンダ リンダ リンダ』の香椎由宇のように、クールさと強さと脆さと情けなさを表現していました。
カースト1軍の最下位だった紺野の松田元太は、感情を顔面いっぱいに押し出して叩きつける熱量あふれる芝居でしばしば周囲を圧倒していたし、リナ役の倉沢杏菜の繊細さと無神経さを同居させるキャラクター造形はドンピシャの立ち位置を射抜いていたと思います。次の出口夏希は、この倉沢さんかもしれない。
そんで、脚本の我人祥太さん。このドラマで、完全に爆誕したと思う。こんなに熱量とロジックを両立させてメタとコアを行き来しながら書ける人だとは、全然思ってなかった。間違いなく仕事増えるでしょう。見てる人は見てるよ絶対。