◆話し合いが足りなかった

離婚
家庭に一生懸命寄り添ってきたという思いが強い夫、だが妻のほうは、自分勝手に作りたいときだけ料理をして、家族においしいと言わせたがる夫だと感じていたのだ。その場でもっとフランクに話せればよかったのだが、家族といえどもどこか遠慮はあるものなのかもしれない。

「私の父が、何が不満なのか家で急に不機嫌になる人だったんです。だから私はそういうことがないように気をつけていた。だけど50歳になったとたんにグループ会社に出向させられて、一時期、精神的に不安定になった時期があったんです。そのことはすぐに妻には言えなかった。ただ、給与が下がりますから言わざるを得なくて。

妻からは慰めの言葉も励ましもなかった。私はそれが寂しかったんですけどね。妻に言わせると『どう慰めたって事実は変わらない。相談されれば別だけど、下手なことを言わないほうがいいと思った』ということだった。話せば話すほど、当時のお互いの気持ちがすれ違っていることがよくわかりました」

妻は次女が就職したら離婚届を差し出すため、何年も前からもっていたと打ち明けた。離婚してどうするんだと聞いたら、「別に」と答えたという。