◆子どもを守るため、私たち大人にできることは?

 このような性被害が起こらないようにするために、私たち大人にできることはあるでしょうか。また、もし万が一起こってしまった場合には、どう対処するのが望ましいのでしょう。臨床心理士、公認心理師、家族と子どもセラピスト学会認定セラピストとして、臨床・執筆活動を行う木附千晶さんに話を聞きました。

――子ども同士の性被害について、木附さん自身は相談を受けたことはないとのことですが、作者のゆっぺさんによると、子どもは被害に遭っても大人にそれを説明するのが非常に困難だということでした。もしかすると隠れた被害者がいる可能性はありますよね。

木附千晶さん(以下、木附)「小さな子どもが大人に説明するのは、ほぼ100%無理だと言ってもいいでしょうね。子どもたちは大人がいけないと思っているようなこと、特に性的なことは、人に言ってはいけない、隠さなきゃいけないと思っています。だからたとえ性被害を受けても、何が起こっているのかわからないから説明できないうえに、大人に話してはいけない、知られてはいけないと思い込んでしまう。まして、自分より体の大きな大人に『秘密だよ』なんて口止めされたら、ますます誰にも言えなくなります」

◆「何かあったら言ってね」「いつでもあなたの味方だよ」

――こういう被害を減らすために、また万が一のときにも子どもが大人に打ち明けやすくするために、私たち大人はどうしたらいいのでしょう。

木附「『生まれてきてよかった』と子どもに思ってもらえるような性教育が、本来は必要です。これは被害者、加害者、どちらの子どもにも言えることです。

 加えて、日頃の子どもとの関わり方で、子どもの目線に立ち『あなたが大事だよ』と尊重することを忘れない。たとえば子どもが何かいけないことをした時、理由も聞かずに頭ごなしに叱っていては、子どもは怒られるのを恐れて、大人にものを言えなくなってしまいます。叱ることも大切ですが、そのときに理由もちゃんと聞いてあげること。大人から見ると『悪いこと』でも、子どもは何らかの意味があってやっていることも多いです。子どもの小さな思い、願いを大切に受け止めて、そのうえで何がいけないか、どうすればいいのか、ちゃんと説明してあげるのが良いと思います。

 子どもたちには普段から『何かあったら言ってね』『いつでもあなたの味方だよ』と繰り返し、言葉や態度で伝えることが大切ですね。自分が大事にされていると確信できている子どもは、嫌なことを嫌と言いやすい。自分を大事にされる経験を積むことが、将来、その子自身を救うかもしれません」