『月刊ニュータイプ』のインタビューで、やす子は「語尾を伸ばさない」ことを意識したそうで、「百道さくではなくやす子だと見られたいわけではありません。コントで役を演じるときはどこかやす子らしさが残っていてもいいですけど、今回は自分を殺すことに専念しました」という意図も語っている。
やす子はやはり「はい~!」というギャグおよび、その語尾を伸ばす言い方におかしみがあり、だからこそのインパクトもあってお笑い芸人としての人気を得ているのだが、今回のように穏やかで繊細な作風のアニメ映画で、その言い方をしてしまうとノイズになってしまうどころか、作品全体の雰囲気を壊してしまいかねない。それを完全に避けた演技は、「あくまでも自分とは違うキャラクターとして演じきる」という姿勢も含めて、称賛せざるを得ない。
◆そもそもやす子はアニメへの愛情が深い
そんなやす子は中高生時代にアニメをよく観ていたそうで、『きみの色』と同じ山田尚子監督のテレビアニメ『けいおん!』に影響されて高校時代にギターを始めたそうだ。バンドこそ組まなかったものの友達と『けいおん!!』(アニメ2期)の主題歌「GO! GO! MANIAC」を演奏したりしていたこともあったらしい。
さらに、2024年6月に放送されたバラエティ番組『行列のできる法律相談所』では、宣材写真の「手のひらを正面に向けるポーズ」の元ネタが、テレビアニメ『日常』におけるインドネシア語のあいさつ「スラマッパギ」のポーズだったことを明かしており、その『日常』の原作マンガの作者である、あらゐけいいちの直筆イラストとメッセージが贈られたこともあった。
やす子は間違いなくアニメが好き、いや愛情があるからこそ、前述したように「自分を殺す」と表現するほどに自分を抑えた、それでいて劇中の優しく穏やかな「百道さく」をこれ以上なく的確に演じることができたのだろう。
◆炎上騒動に巻き込まれた現実があるからこそ……