人気漫画やベストセラー小説を原作に、テレビ局、出版社、大手芸能事務所、広告代理店らがスクラムを組んでTVドラマ化し、さらに劇場映画化するというパターンが日本映画界は長く定着していたのに対し、『ベビわる』は無名監督と若手キャストによる低予算映画が地上波テレビへ進出したという逆パターン。その構図だけでも、痛快じゃないですか。

全盛期のジャッキーを思わせる俊敏なアクション

 それでは、連続ドラマ『ベビわる エブリデイ!』の第1話「10年後も一緒に死体を凍らせよ」のレビューです。脚本・演出はもちろん阪元監督が、劇場版から続投しています。地上波テレビらしからぬサブタイトルがいい感じです。はっきり言って、放送が始まるまでは舐めてました。試写をチェックしたところ劇場版第3弾『ベビわる ナイスデイズ』が壮絶なバトルシーン満載の大傑作なので、TVドラマ版はアクションは控えめで、ちさと&まひろの脱力気味の日常生活がメインになると思っていたのです。

 ところが、序盤からド派手なアクションを見舞ってくれるじゃないですか。殺し屋協会に所属するマネージャー・須佐野(飛永翼)からの指令で、反社会勢力が経営するファミレスに客として来店したちさと&まひろ。冒頭こそ、ファミレスのメニューがけっこうな値段なことをぐだぐだと愚痴るガールズトークから始まるものの、そこから急速ギアアップして、ファミレス厨房での大乱闘シーンに。

 金髪ショートのまひろを演じる伊澤彩織は、日大芸術学部映画学科を卒業し、スタントパフォーマーとして『ジョン・ウイック:コンセクエンス』(23年)など数々のアクション大作に参加してきた若きプロフェッショナル。殺人コック集団を相手に、ウォーターピッチャーをトンファー代わりにして追い詰めていきます。しかも、全盛期のジャッキー・チェンを思わせる俊敏な動きです。

 黒髪ロングのちさとに扮する髙石あかりは、2002年生まれの21歳。すでに『Single8』(23年)のヒロイン、『セフレの品格 決意』(23年)や8月に公開された『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』では物語のキーパーソンを演じるなど、多彩な役を経験。アクションも劇場版三部作を経て、かなりのレベルアップ。フライパンを使ったコミカルな味付けの殺陣で、まひろをサポートします。