(C)フジテレビ
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想像していた家族とは違う形に、弥生は徐々に徐々にしんどくなっていく。特別編で津野が感じた、必ず間に海がいないと成立しない関係と同じものを弥生は感じているようだ(期せずして特別編があったことで弥生の気持ちがより伝わってきた。手を握る・つなぐモチーフも呼応している)。

ずっと気持ちを我慢して夏に言わないようにして、彼と海の前でニコニコ、いい人を演じ続けているみたい。弥生は背筋をのばし、口先だけで行儀良さそうにしゃべっていて、本音が見えない。『虎に翼』(NHK)的にいうと「すんっ」とした感じ。それがどんどんエスカレートしていく。でも「別れたい」「別れたくないよ」とまだぎりぎり保っている。

せっかくふたりでご飯(ラーメン)と思っても、海と3人でと言われ、仕事があると嘘ついて断ってしまう弥生。薄々気づいている夏は弥生の部屋を訪ねる。が、結局そこで伝えるのは、弥生の辛さはわかりながらも海の母になってほしいという甘え。ここはなんだか、正妻はいるけど、君が好きなんだと粘っている場面みたいにも見えてしまった。

◆弥生と水季の皮肉なつながり

弥生は悩んだすえ水季の手紙を読んで、心を決める。

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「誰も傷つけない選択なんてきっとありません。だからといって自分が犠牲になるのが正解とも限りません。他人にやさしくなりすぎずものわかりのいい人間を演じず、ちょっとずるをしてでも自分で決めてください。どちらを選択してもそれはあなたの幸せのためです」

この文面、水季が「ちょっとずるをしてでも」自分の幸せのためにやさしいふりして弥生に別れを決意させたとも見えるし、いまの無理している若い人たちへのメッセージのようにも見える。

皮肉なのは、水季が中絶をやめて、海を産み海ファーストで生きることを選ぶ背中を押したのが、弥生は産婦人科のノートに書いたメッセージだったことである。弥生のメッセージで海が生まれ、水季のメッセージで弥生は海の母になることをやめる。因縁(いんねん)を感じさせる繋がりがやっぱりややホラーっぽさを醸(かも)す。悪く考えれば、水季が弥生に海と別れる呪いをかけたみたいにも思えないことはない。