◆シングル女性の居場所がない

「友だちの多くは20~30代で結婚して、いまは子育て真っ最中。会いたくても予定を合わせづらいし、行く場所もない。せいぜい休日のランチかな。ひとりで出かけるのもイヤではないのですが、知り合いと会うかもしれないので……」

これは、カスミさんの自意識が過剰というわけではないだろう。都市部では出かける先が無数にあるが、地方では人が集う場所がある程度、決まっている。それから、とカスミさんはつづける。

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「都会より人の数が少ないぶん、濃いんですよね。同級生の親はこちらのこと知っているし、こちらも向こうがわかる。家族の構成から親の職業からきょうだいの進学先まで把握し合っています。大人になったらなったで、結婚相手のことも知っている」

お話している最中、カスミさんは何度も「都会はいいですね、他人に関心がなくて」とつぶやいた。都市部には都市部の苦労があるし、他人への無関心がもたらす弊害も多い……なんてことは、カスミさんだって言われなくともわかっている。それでも地元の人間関係の息苦しさから、ついそう思ってしまう。

カスミさんは、服を買うのが好きだった。インタビューの日も、人気ブランドの赤いカーディガンが似合っていた。20代のころは、東京に買い物に出ることもよくあった。

 

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「若さゆえの行動力がありましたね。夜行バスで朝、向こうに着いて、そこから1日ディズニーランドで遊ぶほどの体力もあった。でもいまは、東京行くにしてもお金がかかるなぁ、ってまず思っちゃう。特にコロナ禍になってから、気持ちが萎えてしまったのが自分でもわかります」

好きな服を買うだけなら、いまだとネット通販で十分事足りる。

「でも実際にモノを見て、触っていないから、買い物の勘がにぶってしまうというか……あれ、人生の楽しみってどうやって見つけるんだっけ、って感じです」