また、本作の原題は『Big Hero 6』となっており、日本の「戦隊ヒーロー」にインスパイアされています。1990年代には『パワーレンジャー』が大ブームになるなど、日本発の戦隊ヒーローは米国でも大人気です。戦闘用にバージョンアップされたベイマックスの放つロケットパンチが、クライマックスの鍵を握るなど、日本の特撮&アニメファンには堪らない内容となっています。

 ディズニーアニメは、この時期は絶好調でした。2006年にスティーブ・ジョブズが経営するアニメ工房「ピクサー・アニメーション・スタジオ」を、ディズニーは74億ドルで買収。以降、「ピクサー」で『トイ・ストーリー』(1995年)などの革新的なアニメを手掛けていたジョン・ラセターが、ピクサーとディズニーアニメのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)を兼任します。CGアニメの開発にお金を使いすぎたことからディズニーをクビになった過去のあるジョン・ラセターが古巣にカムバックし、それまで低迷していたディズニーアニメは息を吹き返します。

 9月20日(金)の『金ロー』で放映される『トイ・ストーリー3』(2010年)も、ジョン・ラセターが製作総指揮を務めた彼の代表作です。ディズニーアニメ『アナと雪の女王』は、世界興収1280億円という記録的な大ヒット作となりました。『ベイマックス』は、そんな勢いに乗るディズニーアニメのパワーを感じさせる快作となっています。

 ピクサー買収で世間を驚かせたディズニーは、その後も大型買収を重ね、巨大組織となっていきます。2009年には『アイアンマン』(2008年)などで人気のマーベルコミックの買収に成功。2012年には『スター・ウォーズ』(1977年)で知られる「ルーカスフィルム」を買収。さらに2018年には『エイリアン』(1979年)などのヒット作を持つ「20世紀スタジオ」も買収します。アニメーションづくりとテーマパークの運営をメインにした子ども向けの会社から、M&Aを繰り返す巨大企業へと変貌していきます。