金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』(TBS系)の第10話が8月30日放送された。最終回につながる第10話の内容は“因縁の人物”が再登場する驚きの展開となった。

 本作品は早見和真氏の同名小説(文春文庫)をドラマ化したヒューマン政治サスペンスだ。民和党の官房長官・清家(櫻井翔)は、爽やかなルックスと政治家としての立ち居振る舞いが完璧で、国民から絶大な支持を集める。しかし、清家の背景には知られざる重い過去がある。中国人とのハーフである清家の母・浩子(高岡早紀)は、日本人から差別されてきた先祖の恨みを晴らすため、清家に“政治家としての思想教育”を行ってきたのだ。さらに、清家は高校時代に知り合った親友・鈴木(玉山鉄二)の卓越したプロデュース力を利用して、政界のピラミッドを駆け上がってきた。そして今、清家は国民の直接投票で総理大臣を選ぶ『首相公選制』を提案。清家が目指すのは国のトップの座なのか。清家が国のトップとして実現したい“悲願”とは。清家と浩子の親子が叶えたい“悲願”の全容が徐々に明らかになり始めていたが……。

 第10話のビッグインパクトは、美和子(亜里沙、田辺桃子)の再登場だろう。美和子は大学時代の清家の恋人であり、清家の政治家としての礎を築いた人物。彼女は物語序盤で浩子に負けず劣らずの策士ぶりを発揮し、浩子以上に清家を意のままにコントロールしていた。しかし、美和子は、浩子と結託した鈴木の横やりに合い、清家に失踪することを提案し実行。行方知らずになっていた美和子は、20年近くの年月を経て別人になっていた。浩子の現在の夫・小松(堀内正美)のヘルパー・田所(和田光沙)が、実は美和子だったのだ。清家を裏で操っていると思われた浩子は、15年以上も前に清家から“絶縁”されており、ほんの3年前まで、清家は田所の皮をかぶった美和子の指示で動いていたのだ。

 しかし浩子同様に切られることになった、美和子から清家を奪った“真のハヌッセン”は誰なのか。これこそ最終回で明らかになる物語最大の謎だろう。鈴木、美和子、浩子という手練れたちを出し抜いて、清家を掌握する人物となればただ者ではない。そうなると、清家を官房長官に任命した民話党総裁・内閣総理大臣の羽生(大鷹明良)が“真のハヌッセン”の第一候補となる。羽生からすれば、自身の立場を脅かさない程度に優秀で、愛されキャラを活かして民和党の支持率アップに貢献する清家は、管理下に置きたい存在に違いない。しかし、羽生には清家と共鳴する“志”がこれまでのところ見えてこない。鈴木には「清家を総理大臣にする」という志があり、浩子には「マイノリティに寄り添う社会をつくる」という志があったからこそ、羽生には清家を従わせてまで実現させたい野望や人としての熱量がないように筆者は感じるのだ。