その証拠に、小学校1年生になった娘は現在、積極的で社交的な子どもに育っており、発達や教育の面では問題を感じていません。2歳頃の旅の記憶を、かなり鮮明に覚えていることがあり、親が驚くことも多いです」

 3歳以前の子どもの記憶は、一般的に残りにくいと言われています。これは海馬の発達が不十分なことに起因しています。それ以前の記憶を覚えているということは、濃密な経験がすでに人生に大きな影響を与えていると言えるのかもしれません。

◆子育てで不安だったことは「おむつ」と「友だちづくり」

鹿に遭遇
 デメリットはないと語るこみがえさんですが、車中泊生活で育児をすることは、一般的な家庭と同じような準備や対応ができないことを意味します。こみあげさん自身は、「おむつ」と「友だちづくり」について不安感を持っていましたが、旅の中でそれを払拭していったといいます。

「当時娘は2歳だったので、おむつを外すタイミングを考えました。一般的にはトイトレ(トイレで排泄を行えるように練習をすること)をして外すと思いますが、車中泊生活中は、良いタイミングで促したりケアしたりすることに難しさがあります。当時は夫婦で葛藤があったのですが、結果としては、途中でトイトレをやめ、自然に委ねたら勝手に外れました。

こうした選択は、旅の中で出会った方に言われたことがキッカケです。『おむつがまだ取れないと悩むのは、我が子の成長を誰かと比べているからだ』と指摘をもらったんです。『健康な大人でおむつが取れていない人はいない。絶対にその子のタイミングで自然に取れるんだから、取れていないことに意識を向ける必要はない』とも言われました。

確かにそうだなと思い、それを期に、妻も一切トイトレをしなくていいってなりました。そしたら、本当に娘のタイミングで勝手に外れましたし、今はおねしょもありません。こうした経験も、旅を通じて学んだことの一つです」