確かに、その土地に出向かないと感じられないことはたくさんあります。とはいえ、ずっと3人で、それもキャンピングカーという限られた空間で過ごすというのは、大変ではないのでしょうか。

「キャンピングカーでの生活は、3人で同じ空間にいるので時間がものすごく濃密です。問題が起きれば常に3人で向き合いますし、娘は夫婦喧嘩も目の当たりにします。夫婦喧嘩を見せることは、最初は僕も抵抗がありました。

でも、1つの空間にいる以上、見せないことは不可能です。我が家では、ケンカの後はハグをして『ごめんね』『ありがとう』を伝えることをルールとして、問題をみんなで解決していくスタイルに落ち着いています。こうしたやり方も、また1つの家族のかたちではないかと考えるようになりました」

◆子どもの教育や発達への影響は?

キャンピングカーの内部の様子
 東京で暮らしていた頃にくらべ、子どもと一緒の時間を大幅に得ることができたこみあげさん。とはいえ、車中生活では、教育面をどうケアしていったら良いか、最初は迷いもあったといいます。

「車中泊生活を始めるまでは、旅の終わりを決めていなかったこともあり、教育はどうしたらいいのかなと悩みました。出発前の私たち夫婦は、やっぱりより良い環境で育て、良いものを教えてあげたいと考えていました。具体的にはお金をかけていい学校に進学をさせてあげるとか、英語を教えるといったことです。僕自身、教育熱心で堅めの職業の親の元で育っているので、つい同じような価値観があったんです」

 自分の親の価値観を、知らぬうちに受け継ぎ、子どもにも同じように接してしまうことは良くあります。こみあげさんも例外ではなく、教育面においては、一般的に良いとされる考えを持っていた時期があったといいます。

「でも旅を計画しスタートさせる中で、子どもにとって一番大事なのは、親が隣にいて、子どもが安心している状態を作ってあげることだと思うようになりました。こうした環境を用意できれば、子どもは自然と興味のあることにチャレンジしていきます。