推しの歌を聴いていると、自分の輪郭(りんかく)がとけて光と融合しそうな心地になるとか、大げさでもいいのです。感情に色や香りをつけるようなイメージで言葉を見つけてみてください。

◆読解力や観察力より妄想力

三宅
著者の三宅香帆さん
推しについて発信したい。この欲求の裏には、他人に知ってほしい、という願望があります。「自分だけの感情」だけなら日記にしたためればいいのですが、ブログやSNSで他人に知らしめるには、文章を工夫する必要があります。

工夫=面倒、と尻込みする人もいるかもしれません。難しく考えず、自分の感情をときほぐしていけばいいのです。

たとえば「泣ける」の代わりに、「ふるえた」という言葉を使うとしましょう。「×××を観て心がふるえた」。では、どのように心がふるえたのでしょう。

「ふるえた」という言葉から連想すると、朝露に葉が「ふるえた」とか、寒さで体が「ふるえた」など、バリエーションがあることに気づくはずです。

「スプーンでちょっとつついたゼリーがふるえるように」などでもいいのです。あなたの妄想力を総動員して、心の動きを独自に読みといていきましょう。最初は確かに面倒かもしれませんが、慣れてくれば楽しみに変わってくるはずです。

◆なぜ推しを言語化するのか

今の時代、推しとファンが交流できる場が増えてきました。だからこそ、言葉でも差別化をはかりたいと思いませんか。あなたの心を砕いて綴った文章は、そのままあなたを飾る個性になります。

LINEやメールなど、文面だけで相手の様子が浮かび上がってきた経験はありませんか。自然と、言葉には気持ちがあらわれるのです。

家族、友達、そして推しへ。見えないあなたの姿を言葉で表現するなら、できるだけよい印象にしたいですよね。しかも姿や名前なしに、ブログやSNSやファンレターを読んだだけで推しがあなたを特定してくれたら、それこそやばいくらいうれしくないですか。