かつての花形ドラマ枠だったフジテレビ月9の凋落がささやかれて久しい。最後に平均視聴率(ビデオリサーチ調べ)が10%を超えたのは2022年1月期の『ミステリと言う勿れ』が最後。以降、今年4月期の『366日』まで9作連続で1ケタを記録しており、今期の『海のはじまり』も評価こそ高いものの、数字は5~7%前後を行き来している。

 そんな中、発表された今年10月期の新作は『嘘解きレトリック』。同作は12年から18年まで「別冊花とゆめ」で連載されていた同名コミックが原作となり、鈴鹿央士と松本穂香が「やたら鋭い観察眼を持つ借金まみれの貧乏探偵」と「ウソを聞き分ける奇妙な能力者」を演じる探偵ミステリー活劇。鈴鹿、松本とも月9ドラマには初出演となる。

 月9枠で、いわゆる“原作モノ”のドラマが放送されるのは、長岡弘樹の『教場』(小学館)シリーズを原作とした23年4月期の『風間公親-教場0-』以来、6作ぶり。主演に木村拓哉、脚本に『踊る大捜査線』シリーズの君塚良一という万全の布陣だったが、全話平均視聴率は9.8%とわずかに2ケタに届かなかった。

 この『風間』以降、『真夏のシンデレラ』で5.6%、『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』で5.3%、『君が心をくれたから』で5.8%、『366日』で6.1%と、原作なしのオリジナルドラマで低迷を極めている月9枠だけに、『嘘解きレトリック』には期待がかかるところ。だが、コミック原作だけに、ひとつ間違うと大ケガにもなりかねない。というのも、昨今、視聴者の「コミック原作ドラマ」に対する視線は、ひと昔前とは比較にならないほど厳しくなっているのだ。

 昨年10月、日本テレビ系で木南晴夏主演で放送された『セクシー田中さん』が原作者の意向を無視し、大幅にストーリーを改変した形で制作されたことでトラブルが発覚。SNS上での騒動を機に、原作者の芦原妃名子氏が急死し、自宅から遺書が見つかったことがあった。