多くの人がいずれは直面する親の介護。しかし、まだ親が元気なうちは「介護にはどの程度のお金がかかるのか」といったことを考えることは少ないでしょう。とはいえ、いざ介護が必要になったときに費用を捻出するのでは遅く、経済的な負担も大きくなってしまいます。親が元気なうちから、もしものことを考えて備えておくことが大切です。そこで今回は、介護にかかる費用を解説するとともに、介護予防の観点から子どもとして何をしたらいいかを紹介します。
親の介護はいつからいつまで?
親の介護に限らず、費用を見積もるうえで大切なのは「いつから」「いつまで」ということ。まずは、介護が「いつから」始まるのかを見ていきましょう。
厚生労働省と総務省が2019年に発表したデータをもとに、公益財団法人生命保険文化センターが「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」という資料を作成しています。これによると、要支援・要介護の認定者は70~74歳では5.7%、75~79歳では12.8%となっています。
ところが、80歳代になると、80~84歳では27.8%でおよそ4人に1人の割合で要支援・要介護の認定者となり、85歳以上になると60%もの人が要支援・要介護の認定者になっています。
こうしたことから、親の介護が「いつから」始まるかについては、おおよそ「80歳代から」というのが1つの目安になりそうです。
介護の期間
同じく生命保険文化センターは、過去3年間に介護の経験がある人を対象に「どのくらいの期間介護を行ったのか」を調査しています(2018年度「生命保険に関する全国実態調査」)。この結果によると、介護に要した期間の平均は4年7ヵ月となっています。内訳を見ると4~10年未満がもっとも多く28.3%、次いで2~3年未満、3~4年未満、10年以上がそれぞれ14.5%となっています。
ここから親の介護はおおよそ「80歳代から」始まり、期間は平均して4年7ヵ月というのが目安になりそうです。ただし、同調査によれば「4~10年未満」と「10年以上」をあわせると42.8%になります。
つまり、4年7ヵ月という平均期間よりも長く介護をしていた人がおよそ4割います。平均以上の年月、介護に費やす可能性があることも頭の片隅に置いておいたほうがよさそうです。
介護が必要になる原因は?
厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況」(2019年)によると、介護が必要になった原因の第1位が「認知症」で17.6%でした。第2位が「脳卒中」で16.1%、第3位が「高齢による衰弱」で12.8%となっています。
「認知症」「脳卒中」が上位を占めていることからも分かる通り、脳に関わる病気が介護の主な原因となっています。
介護にかかる費用はいくら?
介護にはどのくらい費用がかかるのでしょうか。介護には在宅介護と施設介護がありますが、どこで介護を行うかによって金額は異なります。ここでは在宅介護について確認していきます。
先ほども参照した生命保険文化センターによる2018年度「生命保険に関する全国実態調査」では、介護費用について調査しています。ここから分かるのは、介護用ベッドの購入や住宅の改造など一時的にかかった費用の平均は69万円だったことと、1ヵ月当たり介護に要した費用が平均7万8,000円だったことです(いずれも公的介護保険サービスの自己負担費用を含みます)。
ただし、月額は「15万円以上」がもっとも多く15.8%、次が「5万~7万5,000円」で15.2%、「1万~2万5,000円」が15.1%となっていて、ばらつきが大きいのが特徴です。
誰が介護する?
では、介護を担っているのは誰なのか、「国民生活基礎調査の概況」(2019年)を見てみましょう。この調査によると、介護を担当しているのは同居する家族が54.4%、事業者が12.1%、別居の家族が13.6%です。
同居の家族で介護を担当しているのは、配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%となっています。また、介護する同居家族の男女比を見ると、男性が35%、女性が65%となっています。