◆いいもの、美しいものは世界じゅうに存在している

バブーシュ各種

 モロッコと言えば、マレーネ・ディートリッヒの映画か、あるいはクスクスぐらいしか思いつかなかった私が住む家に、ケイト・ブッシュの歌曲の題名に似ていることから覚えていた、不思議な名称を持つ山羊皮でできた履物がこうして玄関の上がり框(かまち)に並ぶのも、美しき店主が、まだ日本の人々が存在も名前も知らぬ、けれども世界には確かに存在している美しきものたちを紹介してくれたおかげでしょう。

 そこにあることも、名前も知られていなくても、いいもの、美しいものは世界じゅうに存在しています。そういったものを長く大事に使い続けることが本当の豊かさではないかと、私は考えています。

<文/小林直子>

【小林直子】

ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。