つまり、小劇場で着実に演技を磨くことで、戦い方次第ではメジャー作品への進出も夢ではない。すべては戦略と地道な努力次第。変にひけらかすわけでもなく、単純に自分は松崎しげるの息子なのであるという強みをごく自然にアピールすることは大きなアドバンテージ。松谷の今後の飛躍は十分あり得る。

◆父との共演作で演じた2.5次元俳優

『スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』(TBS、1984年)など、こてこての骨太ドラマを作風とする大映テレビ制作のドラマ『噂の刑事トミーとマツ』(TBS、1979年~1982年)で松崎しげるが俳優デビューした頃から40年以上を経て、俳優となった息子との共演作『あなたもきっと騙される』(BS-TBS、2021年)がある。これが不思議と興味深い作品なのだ。

 同作は、消費者庁提供特別ドラマで、松崎扮する演劇プロデューサーに騙されたことをきっかけに、逆に騙し返してやる2.5次元俳優役を松谷が演じた。松谷の役柄があまりに象徴的ではないか?

 今や演劇世界で身を立てるなら、とりもなおさず2.5次元俳優としての成功か一番手っ取り早い。小劇場演劇の俳優である松谷がドラマの世界で別フィールドの演劇人を演じること。もし松谷優輝が、2.5次元俳優なら? という世界線を考えるのも今後の飛躍を見定める上では有益だろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu