利用者がもっとも多い独立行政法人日本学生支援機構の奨学金を借りる際には、利子の有無など複数ある制度の中から貸与される月額を決めます。貸与月額を決める際には、学費や生活費、そのほかの費用をシミュレーションすることが重要です。そうすることで、学費が足りなかったり、借り過ぎて返済に苦労したりする事態を防ぎたいものです。この記事では、貸与月額を決める際のイメージを明確にするため、奨学金が必要となるケースの具体例を複数紹介します。

自宅から大学に通う学生が選べる貸与月額の選択肢

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はじめに、自宅から大学に通う場合、貸与月額の選択肢と目安となる月額の例を紹介します。

第一種奨学金(利子がつかないタイプ)

第一種奨学金は無利子の奨学金になります。無利子なだけに、選考には「学力基準」「家庭基準」ともに厳しい条件が設けられており、それを満たしていることが必要となります。そうした基準をクリアすることで、自宅通学の場合、以下の中から貸与月額を選ぶことができます。

<自宅通学の場合>

大学の種類 貸与月額
国公立大学 2万円、3万円、4万5,000円
私立大学 2万円、3万円、4万円、5万4,000円

また、以下は進学で実家を離れ自宅外から通学する場合の貸与月額です。

<自宅外から通学する場合>

大学の種類 貸与月額
国公立大学 2万円、3万円、4万円、5万1,000円
私立大学 2万円、3万円、4万円、5万円、6万4,000円

第二種奨学金(利子がつくタイプ)

第二種奨学金は利子がつくタイプの奨学金になります。第一種に比べ選考基準はゆるく、多くの人が利用しています。第二種は、自宅通学・自宅外通学を問わず、月額2万円~12万円(1万円刻み)の範囲で貸与月額の設定が可能です。

ただし、私立大学の医・歯学の課程ならば12万円に4万円の増額、私立大学の薬・獣医学の課程ならば12万円に2万円の増額が可能です。

第二種の場合、奨学金の申請を行う際に「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかを選択します。利率固定方式は「貸与終了時に決定した利率」が返済終了まで適用されます。将来的に金利が上昇した場合でも利率が変わらないことから、返済プランが立てやすいといった特徴があります。ただ、金利が下がった場合でも固定であることから返済の利率が下がることはありません。

利率見直し方式は、返済期間中およそ5年ごとに利率が見直されます。利率固定方式よりも利率が低い傾向なのですが、金利が上がった場合には利率も上がるのが特徴です。従って金利が上がった場合には利率固定方式よりも返済額が上がる可能性があります。

なお在学中は無利息で、いずれの方式も利率の上限は3%です。

貸与月額を決める目安

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貸与月額の選択肢が多く、どの金額を選べばいいか、迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。念頭においておきたいのは「卒業後の返済」です。奨学金の返済は、貸与が終わった月の翌月から数えて7ヵ月目からスタートします。たとえば3月に貸与が終了した場合、10月から返済が始まります。

多くの場合、社会人として受け取る給料から払っていくことになるわけですが、借りた総額によって月々の返済額が違ってきます。総額から月々の返済額が導き出されますが、その金額を給料から払い続けることができるかを考えることが大切です。

2018年に労働者福祉中央協議会が実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」によると、奨学金の借入総額は平均324万3,000円、月々の返済額は平均1万6,880円となっています。

こうした金額が貸与月額を決める1つの目安となるのではないでしょうか。

それではさっそく具体的にイメージしやすいよう事例を見ていきましょう。なお、これからご紹介する事例は、第一種の上限金額を受け取った場合を想定しております。第二種の場合、貸与額2万円~12万円と幅が大きいことからさまざまなパターンが想定され、シミュレーションが複雑になります。よってシンプルなプランである第一種でシミュレーションしていますが、第二種を考えられている人でもプランの立て方として参考になるかと思います。

事例1:第一種で自宅から国公立の大学に通う場合

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自宅から国公立の大学に通ったとします。第一種(自宅通学)の上限である4万5,000円を貸与月額にすると、年に54万円を借りることになります。

文部科学省が調べている「国公私立大学の授業料等の推移」によると、2019年の国立大学の授業料は年額53万5,800円(国が示す標準額)、公立大学は平均53万8,734円となっています。従って、奨学金のみで授業料に充てることができます。

大学生活を送るにあたって足りない費用は、アルバイトなどで補うことができるでしょう。

事例2:第一種で自宅から私立大学に通う場合

私立大学の場合、年間の授業料は平均90万4,146円です(上記の文部省調べによる2019年の平均)。第一種の上限である5万4,000円を選択したとして、年間64万8,000円を受け取ることができます。

これだと約26万円不足することになり、これを12ヵ月で割った場合、月々約2万2,000円別途必要になってきます。あくまで平均による試算ですが、不足分は週に1~2度のアルバイトで埋めることもできるでしょう。